幸せ探しの旅に出よう
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四代目は鈍感だと思っていた。
鈍感であってほしいと願っていた。
そうすれば伊織さんに思うように近付けると思っていたのに。
伊織さんとオレの間に割り込んで来て「プレゼントしたいんだ」なんて台詞を言うとは思っていなかった。
伊織さんが四代目を見つめる瞳には変わりはないが、四代目が伊織さんを見つめる瞳は誰が見ても分かるくらい変わった。
(大方、カカシさんのサポートだろう)
恐らく、いや確実に四代目は伊織さんへの想いを自覚した。
面倒な事になった。
だが此処で引くわけにもいかない。
「伊織さん、良かったらこの後団子屋でも行きませんか?」
「団子屋、ですか?」
「はい。この間偶々見つけた所なんですけど、伊織さんと一緒に行きたいと思っていたんです」
「あ、でも…」
伊織さんの瞳が隣にいる四代目の方に向けられた。
「ミナト様もご一緒にどうですか?」
「えっ、いいの?」
「いいですか、イタチさん」
「…ええ、もちろんです」
「ん、それじゃ行こうかな」
伊織さんはこういう人だった。
他人を優先してしまう優しい人。
忘れていたわけではなかったが。
「凄く美味しいです」
「ん、本当だ。美味しいね、伊織ちゃん」
伊織さんの隣に座る四代目に幻術をかけてしまいたくなる。
お茶を一口飲んで心を落ち着かせる。
「気に入っていただけたようで嬉しいです」
「美味しくて何本でも食べられそうです」
「…今度は2人で来ませんか?」
四代目が居ようが関係ない。
一緒に暮らしている四代目が相手では、勝負は圧倒的にオレが不利だ。
これくらいしなくては。
伊織さんはすぐに笑顔を見せて「はい」と返事をくれた。
隣に座る四代目は少し驚いた表情を見せた後、口を噤んだ。
悔しい、という表情が露わになる。
しかし四代目もすぐに仕掛けてきた。
「伊織ちゃん。お団子お土産に買っていこうか」
「そうですね。ナルト君にも食べてもらいたいです」
「伊織ちゃんの入れてくれたお茶に合いそうだね」
「そんな事ないですよ。ミナト様はいつも褒めすぎです」
今度はオレが口を噤む番だった。
オレが絶対に入れない領域に簡単に入り込む四代目が羨ましくもあり狡くもある。
それでもオレは。
「伊織さん、餡が口元に」
「えっ、あ、何処ですか?」
「ここです」
親指で餡を拭って、そのままそれを口に含む。
顔を真っ青にする四代目に見せ付けるかのように、なるべく優しい笑顔を見せて。
「可愛いですね、伊織さん」
伊織さんの顔が真っ赤に染まった。
負けられない。負けたくない。
(絶対に貴方だけには)
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火花バチバチです。
それに気付かないヒロインもなかなかですが。
天然というか、人の顔色ばかり気にしてしまうんです。