ようこそ、暁荘へ
□黒ゼツ、白ゼツとの出会い
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暁荘に越してきて一週間。
ここら一帯にも大分慣れてきて、バイトも始まって、いい感じだ。
ペインお兄ちゃんが言うには暁荘には中庭があるらしく、休日はたまにそこでバーベキューをしたり、鬼鮫さんの新メニューの試食会をするらしい。
(けっこう大きい…)
早速中庭とやらに向かってみたが、思っていたものより大きかった。
確かにここでバーベキューやったら楽しそう。
「わ…、綺麗な花がいっぱい…」
中庭の隅には花壇があって、そこには色とりどりの花が咲いていた。
きっと小南さんが育てているに違いないと、私の背丈位に成長している向日葵を突っつく。
「あら、鈴じゃない」
「小南さん、こんにちは」
「綺麗な花よね」
「はい。小南さんが育ててるんですか?」
「私じゃないわ」
「え…」
じゃあ誰が?と言葉を続けようとしたら、後ろから2人の声が聞こえた。
「あれ、誰か知らない人がいる」
「オイ、ソレ二触ルナヨ」
「丁度良かった。鈴、紹介するわね。白ゼツと黒ゼツよ」
「あ、こんにちは。私、105号室に越してきた向井鈴です」
「よろしくー。ボクは204号室の白ゼツです」
「オレハ馴レ合ウキハナイ」
双子だろうか。
1人は明るくて白い人だけど、もう1人は黒い人。
黒い人は何だか不機嫌そうだ。
「2人がこの花を育ててるのよ」
「そうなんですか?凄いです!」
「そんな事ないよ」
「別ニ凄クナイ」
どうやら白ゼツさんと黒ゼツさんの性格は真逆のようだ。
2人は花の世話をしに来たのか、手には肥料とじょうろがあった。
「それじゃあ、私は行くわ。またね、鈴」
「あ、はい。お仕事頑張って下さい」
小南さんは腕時計で時間を確認すると、キャリーバッグを持って行ってしまった。
聞いた所、小南さんは世界で活躍するフラワーコーディネートで、海外に長期出張は当たり前らしい。
「あの、何かお手伝いできることありますか?」
「ナイカラ近ヅクナ」
「す、すみません…」
辛辣な黒ゼツさんの言葉に、邪魔にならないよう部屋に戻ろうとすれば白ゼツさんに止められる。
「ごめん、ごめん。あいつ人見知りなんだ」
「あ、いえ…」
「デタラメ言ウナ」
「手が荒れちゃうから、これつけて」と白ゼツが手袋を渡してくれた。
これは手伝ってもいいということだろうか。
手袋をはめて黒ゼツさんの隣にしゃがめば、黒ゼツはビクッと体を震わせた。
どうやら人見知りは本当のようだ。
「綺麗なマリーゴールドですね」
「……花、詳シイノカ?」
「昔、花の図鑑はよく見てました。一応女なんで花とかは好きで…」
「…ソコマデ聞イテナイ」
「あ、すみません」
調子に乗りすぎてしまった。
意味もなく穴を掘りながら反省していると、黒ゼツさんとは反対側に白ゼツさんが座る。
「黒ゼツが掘った穴に肥料入れてもらっていい?」
「あ、はい」
左に座った白ゼツさんとは会話は弾むものの、右に座っている黒ゼツさんとは無言が続く。
「お疲れ様、鈴」
「あ、すみません、白ゼツさん」
少し影に入って白ゼツさんに渡された麦茶を一口飲む。
火照った体に冷たい麦茶が染みて美味しい。
見ると黒ゼツさんはまだ作業をしていて、額には汗が滲んでいた。
「黒ゼツさん、麦茶どうですか?」
「…モラウ」
「暑さで倒れてしまったら大変なんで無理しないで下さいね…」
「…ナンデソコマデ」
「勿論花も大切ですけど、それ以上に黒ゼツさんの方が大切ですから…」
「…フン、余計ナ心配ダナ」
「本当に素直じゃないんだから…」
「鈴!ビッグニュースだ!ちょっと来い!」
「あ、デイダラ君。今行くね!」
突如デイダラ君が現れて、何かを手にして私を呼ぶ。
「それじゃあ、私行きますね。あまりお手伝い出来なくてすみません」
「そんな事ないよ、ありがとう」
借りた手袋の汚れを落として、白ゼツさんに返す。
まだ花壇に向かって作業している黒ゼツさんには軽く頭を下げて立ち去ろうとした時。
「オイ、マテ」と黒ゼツさんに呼び止められた。
「コレ、ヤル」
「…いいんですか?」
黒ゼツさんが私にくれたのは、色とりどりの花束。
向日葵をメインに色々な花が綺麗にまとめられている。
「ありがとうございます!」
「別ニ…。タダ小南ニアゲルツイデダ」
そういう黒ゼツさんだけど、小南さんはさっき海外出張に行ってしまった。
確かに白ゼツさんに言った通り、素直ではないようだ。
「また来てね、鈴」
「はい、是非!」
「…勝手ニシロ」
何となくだけど、黒ゼツさんとは仲良くなれそうな感じがするのは私だけだろうか。
黒ゼツさんから貰った花は部屋に飾った。
やっぱり色とりどりの花が置いてあると気分がいつもと違う。
改めてお礼に言ったら黒ゼツさんは顔を真っ赤にしてしまった。
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白ゼツ黒ゼツは2人で1人という設定。
黒ゼツよりも白ゼツの方が書くの難しいです…。
練習せねば。