short
□所謂、逃げるが勝ちってやつ
1ページ/1ページ
「ずっと貴女を見ていました。オレと付き合ってくれませんか」
「…は?」
神様仏様。
これはなんの罰ゲームなんですか?
何故こんなイケメンが私なんぞに交際を求めているんですか?
あと20分でバイトが終わるからと、ニヤニヤしていた私に対する罰なのですか?
「あの、紫暮さん?」
名前まで知っているだと?
あ、そういえばネームプレート付けてたんだっけ。
いやしかし、本当にイケメンだな…。
若干サスケに似ている気がするけど、きっとそれは本当に気のせいだろう。
こんなイケメンに告白されて、どうすればいいか分からないけど、言わなくちゃいけないことがある事くらい私にも分かる。
「お客様。他のお客様がお待ちですのでお引き取り願います」
にっこりと、営業スマイルで言い放った。
後ろに並んでいる人の怪訝そうな瞳を彼は気付いていないのだろうか。
さっきから「早くしろ」と言わんばかりに見ているのに。
軽く勇者だな、おい。
「……、それはすまない」
彼はちらりと後ろを見て、自分に刺さる視線に気づいたのか、買った商品を手にして出て行った。
「次にお待ちのお客様。お待たせしました。どうぞ」
今日はとことんついていない日だ。
お客にバレないように小さな溜め息を吐いて、自分の不運を呪った。
「お疲れ様でしたー」
結局あの後、時間通りに終えることは出来ず30分の残業をしてしまった。
従業員専用のドアから挨拶をして出れば、体に突き刺さる冷気。
防寒はしっかりしていても、思わず体を縮める程。
そしてコンビニの裏とは似つかない、先程のイケメンがいた。
「……」
「お疲れ様です、紫暮さん」
「……どうも。どうしたんですか?」
「貴女を待っていました」
クラスの男子が言ったら身が凍るほど寒い台詞を、さらりと言い除けたイケメンさん。
てか、どうして従業員専用出入り口を知っているんですか。
はっ、もしや店員の中にグルが居るんじゃないだろうか…!
持っている物と風貌から見て、さっき出て行ってからずっと此処で待っていたようだ。
「紫暮さん」
「…はい」
「改めて言わせて下さい。…貴女をずっと見ていました。結婚を前提に付き合って下さい」
何かエラい言葉が付け足されてますけど?
"改めて言わせて下さい"って、改めて言ってませんけど…!
イケメンなら何言っても許される訳じゃないんだぞ!
「私、知らない人とは付き合えません。ごめんなさい」
直角に腰を折って丁寧に断りを入れる。
こんなイケメンさんを断るなんて心が痛むけど。
いや、本当にお前は何様だよって話なんですけど、こう見えて私も17歳の乙女なんです。
夢見る少女なんです。
こんな全くキュンとしないシチュエーション、私は望んでいないんです。
(本当にごめんなさい!)
そして頭を上げると同時に脱兎の如く逃げた。
その時一瞬だけ目に入ってしまった、イケメンさんの今にも泣きそうな顔は見なかったことにしておく。
所謂、逃げるが勝ちってやつ
(そんな悲しそうな表情しないで下さい。心が揺れます)
ーーーーーーーーーー
なんだこれ、ですね。すみません。
ギャグを目指して書いていたんですが…、全く笑えず中途半端になってしまいました。
もちろん続きます。