short

□キスでぜんぶ忘れるから
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満月が綺麗な夜。

イタチは私の前に現れた。


「月、綺麗だね」

「…ああ、」

「前はよく星を見に行ったよね」

「…ああ、」

「…イタチ」

「…」

「私も、殺すの?」

「…」


長い沈黙の後、イタチは絞るような声で「ああ」と頷いた。

結局、クーデターを止められなかった。
皆、殺した。

紅い瞳から、涙が零れ落ちた。


「なんで…、イタチが…、イタチばかりがこんな辛い思いをしなくちゃいけないの…?」

「…瑠那」

「全部、私が変わってあげられたら、いいのに…」


イタチの苦しみも痛みも辛さも、全部。
私だけのものになれば。


「そうなれば、イタチは、幸せになれたのに…」


自分の無力さに苛々する。
大好きな人1人、助けることが出来ないなんて。


「…瑠那っ」


足元から崩れそうになる直前、イタチに抱き締められた。


「…やっぱりオレは、お前を殺す事なんて…出来ない」


でも、連れて行く事も出来ない。

なんて酷い人。
いっそのこと、殺してくれれば、どんなに楽だろうか。

二度と会えない貴方を想ったまま、生きる事なんて出来るのだろうか。


「ねえ、イタチ…。私の最後のお願い聞いてくれる?」


ずっと、大好きだよ。
愛してるよ。

だから、


「キス、して」






(明日は青空になるね)




 

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