Novel Room

□小箱
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ウラインターネットのマーケット、表の電脳世界に引けを取らない程に活気づいている。
(マーケットとやらは…単なる娯楽にすぎんか……)
擦り切れたマントを羽織い、人混みを歩いていると、ある一点に小さな小箱を並べている店に目が止まった。
「さぁさぁ、一昔に人間が作ったオルゴールってヤツだ。恋人へのプレゼントには打ってつけだよ〜」
(人間が作ったものだと…?)
店の前に立ち、小箱を凝視している彼に主人が気づき、その顔を見た瞬間に全身に悪寒が走った。「ふ…フォルテ?!ひぇ〜!!デリートだけは〜!!」血相を変えて走り去るナビ、足下に置き忘れた小箱が開いた。中から流れる曲が彼の耳に届き、それを拾い上げた。
(良い音色だな…アイツに持っていくか)
「おい、金を…」
しかし、とっくに主人は逃げ去っており、どこにも姿は見えなかった。
「……まぁ、良いか」

オペレーターの寝息を聞きながら夜の電脳世界を眺めていたナビの元へ、静かに彼は降り立った。「まだ…起きていたのか?」
声をかけると、そのナビは自らの方に向き直り、微かに笑みを浮かべた。「フォルテ…どうしたの?」
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