フェイタン短編.1

□そのままの自分を。
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棚の上にある食器を必死で取ろうとするサヤカ。
背伸びをした小さな体はプルプルと震えていた。










そのままの自分を。










サヤカはワタシより背が低い。
5cmほど小さい。

だからサヤカよりほんの少し高いところにある物なら、ワタシが取ってやれる。

しかしサヤカがだいぶ届かないところだと、ワタシも届かない…。


放って置くのもかわいそうで隣に行き、ワタシも手を伸ばしてみたが……


「あ、ありがとうフェイ。大丈夫だよ、脚立持って来るから」


やっぱり届かないワタシを見てサヤカが言う。

その気遣いがなんとも悲しい。
これでハイと引き下がれず、サヤカをひょいと持ち上げる。


「わっ!」

「…これで届くね」

「わあい、ありがとうフェイ!」





日常生活を送っていると、こんな場面に出くわすことがしばしばある。


蜘蛛のメンバーはコルトピを除いてみんな背が高い。

昔からの付き合いなので周りが成長していくのは見ていたし、自分もある程度伸びるものかと思っていた。

しかし自分だけ伸びず、このままの状態で気づけば成長期とやらも終わっていた。


それでも特に気にすることはなかった。

戦闘や仕事の時についてはジャンプ力があるから不便なこともないし。

言うなればさっきのもジャンプして取れないこともない。


…が、それはなにか違う気がする。


困っているサヤカの後ろから、さっとさりげなく上にある物を取ってやる。

それが自分のしたい理想像である。


…そういえばイルミとかいう嫌な男はかなり背が高かった。

鎖野郎も自分よりは高かったし、まだずいぶん若いからこれからも伸びるかも知れない。



……



「おーい、もしもーし?フェーイ??」


…ハッ


「どうしたの珍しくボーッとして」


サヤカの手が目の前をヒラヒラして我に返った。


嫌な奴らのことを思い出し、しかもその背が少し羨ましいと考えてしまった自分にムカムカした。


……これが自己嫌悪というやつか。


「…なんもないね」

「家でじっとしてるからかなあ?そうだ、気分転換にお出かけしない?」


ワタシの考えなど予想もつかないサヤカはニコニコ笑って言う。


「…まあ、良いね」

「ほんと?じゃあ前言ってた映画見に行こうよ!」

「わかたね」


じゃあ着替えて来るー。
と踊るように部屋に行くサヤカ。


たまにはお出かけも良いね。

お前とならね。
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