フェイタン短編.1

□小さな恋人
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サヤカが腹が減ったというので買い物を済まし、仮宿へ戻った。
冷蔵庫を開いて見たサヤカが高い声をあげた。










小さな恋人










「あー!シュークリームがあるー!」


買い出しに出るまではなかった品。

誰か戻ってきて、入れたようだ。

サヤカはいそいそと白い箱を取り出して机に置く。


「わあ、5つもあるよー、美味しそう!」


開いた箱の中には、いかにもサヤカが好きそうな生クリームがはみ出んばかりに入ったシュークリームが並んでいた。


「誰のかわからないね。勝手に触るないよ」

「そうだけどさ、名前書いてないんだよね。いらないのかなあ?」


仮宿は蜘蛛のメンバーなら誰でも出入りするため、冷蔵庫を使う時は自分の物には名前を書くようになっている。

書いてないなら取られても文句は言えないわけだが…。


「サヤカ以外こんな甘そなの、持て来る奴考えられないね。得体が知れないね」

「団長かも知れないじゃん!」

「団長だたら最早威厳もクソもないね」


未だ戻ってこないのにシュークリームだけそっと差し入れ?
しかも5人分だけて団員数に足りな過ぎだし。


「5つもあるし1つくらい…」

「プリン、エクレア、クレープ…こんなけあてまだ食べるか」

「だってシュークリーム買ってないもん!」

「胸張て言うことか…」


サヤカから箱を取り上げ、冷蔵庫に戻す。


「あぅーー…フェイ〜〜…」


人差し指を咥えながらワタシを見つめるサヤカ。


…う

そんな潤んだ瞳で見るな。
わざとか…わざとやてるか?
いや、サヤカの場合無意識だからタチ悪いね…。


「……ハァ、わかたね」

「ほんと!?」

「1つだけね、あまり食べ過ぎたらすぐ腹壊すよ」

「うん!わーい!」


まったく、腹が弱いくせに大食いだから厄介だ。

…と思いつつもサヤカにお願いされたら結局言うことを聞いてしまう。
ワタシ重症ね。


「フェイはいらないのー?」

「甘いの嫌いね」

「はい、あーん!」

「…人の話聞いてたか」


とは言えサヤカが差し出したのはガトーショコラケーキの一口。苦目だからこれくらいなら嫌ではない。

一応甘いのが嫌いなワタシへの配慮らしい。


「あー美味しい、このシュークリーム」

「口に付きすぎね、子供か」

「わわ、自分で拭けるよぉ」


自分の口のサイズをわかっていないのか、サヤカはよく口の周りに食べた物をつける。

それをワタシが拭う。
だらしないと思いながらも、なぜかサヤカのこととなると進んでやりたくなる。
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