フェイタン短編.1

□嵐の夜
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ガタガタバンバン仮宿の窓が揺れる。
さっきまでなんともなかったのに、突然の嵐。









嵐の夜










私、フェイ、フィン、シャル、シズク、マチで仕事後食事を済ませて帰って来た途端にこれだ。

夏は夕立もあるし、台風もあるし、これだから困る。

ああ、仮宿の窓突き抜けたりしないよね、とドキドキしていると、急に辺りが真っ暗になった。


「ぎゃー!で、電気がー!」

「単なる停電ね」

「いやあー!く、暗い、くらい!怖いー!」


暗いとこが苦手な私は、単なる停電でパニック。
そこら中を走り回る。


「ちょとサヤカ、走り回るないね、危ないよ!」

「電気、電気!か、懐中電灯!フェイ懐中電灯…フェイどこ!?フェイー?!?」

「ワタシずと同じ場所いるね、サヤカが動き回るからわからなく…」


ドンッ!


バタッ!


「あ、あ、フェイいた!良かった、フェイ〜!」


なにかにぶつかって倒れた。

フェイと思い込み、その胸板と思われる部分にスリスリする。


「サヤカ、一体なにに抱きついたか!ワタシ違うね!」

「……へ?」


暗がりに目が慣れて来たので、私の下敷きにしているものを見てみる。


「……や、やあ、サヤカ」








「い、いやああああー‼︎‼︎‼︎」


バチーン!


と、豪快にビンタの音が響いた。


ああ!!
フェイと間違えてシャルに乗ってしまっていたなんて!
フェイと間違えてシャルにスリスリしていたなんて!


「私のバカバカ!フェイは?フェイはどこー!?」

「ワタシここね…」


肩を掴まれて振り向く。
そこをじっと見てみると、薄っすらだけどちゃんとフェイの姿が確認できた。


「あ、フェイ!フェイいた、良かった、フェイ会いたかった〜〜!」

「1分と37秒ぶりね」

「さすがフェイ!鬼のような正確さだねー!」


今度こそ目当ての胸板にスリスリする。


「…お前さき誰にスリスリしてたか」

「あ…フェイと間違えてシャルに…」

「ハ!?」

「ああっ!私、フェイじゃないって気づいてなんの罪もないシャルにビンタして来ちゃったよ!どうしよう!!」

「…」


少し離れた場所にシャルを見つけて駆け寄る。


「ごめんねシャル、勝手に勘違いして抱きついたのに。痛いよね?すぐ治すから!」

「あ、あ〜…うん、ちょっと口の中が切れたかも」

「うわあ…ほ、ほんとごめんね。どの辺かな?」

「うん、この辺…」


シャルが口を近づけて来るので、私は傷口を見ようと目を凝らす。

そこでシャルの片頬が異様なくらい伸びたので、なにかと思えばフェイがつねっていた。


「へえ、怪我したか、それは大変ね、ワタシによおく見せてみるよ、あん?」

「いででででで、ちょ、じょうだん、怪我してないから、してないから離して!」


そう言われるとフェイはシャルの頬を限界まで引っ張って、バチンと音が立ちそうなほど勢い良く離した。

…うわあ、痛そう。
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