フェイタン短編.1
□片想い
2ページ/8ページ
こんなことに時間を費やすなら、本を読んで新しい拷問に思いを馳せたり、美術品を盗んで愛でたりする方がずっと良い。
それにそもそも、自分は人と関わるのが苦手だし好きでない。
フィンは凶暴な気質が合うせいか、行動を共にすることも多いが…。
それでもずっと一緒にいたいとは思わない。
1人の時間が必要だ。
つまらない?大きなお世話ね。
これで良いね、ワタシは、こういう性格よ…。
…
団長が用事があると言うので、団長、フィン、シャルと流星街に来た。
団長が用事に行く間暇だったので、久しぶりに来た故郷を散策することにした。
…変わてないね。
相変わらずのひどい臭いとガラクタの山。
お世辞にもきれいとは言えない街。
自分が子供の頃に捨てられた街。
故郷だから嫌いとは言わない。
ただ、好きとも思わない…。
「はーい、みんな次はなにして遊ぶー?」
不意によく通る声が聞こえて足を止めた。
声の方を向くと、そこには見慣れない光景があった。
大勢の子供たちが集まり、それに囲まれた女が1人。
大人…か?
ワタシより小さいね。
「よーし!じゃあサッカーしようサッカー!」
「サッカーってなにー?」
「んー、とりあえずこの球を転がしてー、この線から先に入れたら勝ちー!」
この暗く荒んだ街にはそぐわない声。
ただなんとなく、でもなぜか目が離せなくて。
立ち止まって様子を眺めた。
遠巻きに見た彼女は、長く柔らかそうな黒髪に、大きな瞳をしていた。
「おりゃあー!」
「キャー!」
子供たちはキャッキャと騒ぎ、その中心には常に彼女がいた。
ボールを転がして、時に彼女が転んで、子供も転んで、ガレキを慣らして平らにされたわずかな空間で、彼らは戯れていた。
決して派手な服装はしていないが、彼女は流星街出身の人ではないと思った。
遠くから見てもわかるほど、彼女の存在は異質だった。