フェイタン短編.1
□ヤキモチ
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…ああ、疲れた。
心臓に悪い。
でもカルトは1人で部屋に来たし、執事たちも余計な干渉はしてこないだろうから意外と平和に解決しそうだなあ。
良かった良かったー、と1人胸を撫で下ろす。
久しぶりの屋敷を歩いていると、不意に通りすがりの扉が開いた。
「サヤカ」
懐かしい声に振り返ると、そこにはキルアと同じ銀髪をしたおじいちゃんがいた。
「ゼノおじいちゃん!」
「久しぶりじゃのぉ。どれ、茶でもせぬか。シルバもおる」
「わあい!おじさんもいるんだ!」
部屋に入ると、ゴージャスな椅子に座っているシルバがいた。
「久しぶりだなサヤカ。元気だったか?」
「シルバおじさん!」
2人にもとてもお世話になった。
修行をつけてくれたのはイルミだけど、2人は暖かくそれを見守ってくれて、私が寝泊まりするのもご飯を食べるのも快く受け入れてくれた。
「ご無沙汰してます!この通り、元気でやってます」
ムハっ!と力こぶを作ってみせた。
「はは、それは良かった」
それからお茶をしながら色々話をした。
昔のこと、今のこと。
そして…
「あの…私、お2人に謝らなければいけないことが…」
「うん?」
「私…実は、もうイルミとは…」
「ああ、とっくに恋人ではないんだろう」
私が言い終わる前に、おじさんに先に言われた。
「わかっておるわそんなの。わしら何年生きておると思っとるんじゃ」
「ゼノおじいちゃん…」
「残念じゃの〜わしがあと40年、若かったらのぉ」
「俺があと20年若かったらな…」
若かったらどうしてたんだという話だけど、なんかホッとしちゃった。
「ありがとう、2人とも。私2人のこと好きだから、でも2人の大事なイルミとうまくいかなくて、嫌われるんじゃないかって…ちょっと複雑だったんだ」
「嫌いになるはずなかろう。まあ、イルミとサヤカの孫の顔は見てみたかったがなあ」
子供…ベイビー…
それを聞いてカキンと固まる私。
「ハッハッ、イルミがダメならキルアでもええぞい」
「…ええっ!?そんな、キルアは子供だし。それにキルアに選ぶ権利があるよー、こんなおばさんかわいそうだってー」
「…」
…
…ん?
「…サヤカは頭はええが、ちょっと鈍感じゃのぉ」
「天然、というやつですよ。まあまたそこも良いとこです」
「?……あっ!そろそろ戻らなきゃ!」
そうだ、のんびりとお茶してる場合じゃない。
お手洗いに行くと言って出て行ったのに、いくらなんでも長すぎだよね。
「サヤカ、イルミのことは関係なく、またいつでも顔を出してくれ。食事でもしながら話がしたい」
ソファを立ち上がって扉を出ようとした私におじさんが言った。
「はい、ありがとうございます、また必ず!」
大きくお辞儀をして、部屋を後にした。