フェイタン短編.1

□そのままの自分を。
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映画館にやって来たワタシたち。

平日ということもあり空いている。


「あっ、しまった今日レディースディじゃなかった」


金ならいくらでもあるのにそこを気にするか?


「本当不思議な奴ね」

「あはは、いやあ、貧乏癖はそうは抜けないからねー」


隣では恋人らしき男女が、腕を組んで、女が恋愛映画を観たいとしきりに言っている。

こちらはというと…。


「あ、これこれー!楽しみー!」


一般的に女はあまり見ないであろうアニメの映画を指差してはしゃぐサヤカ。


「フェイも観たいって言ってたし良かったよー、シズクもマチも一緒に行ってくれないんだもん」


…シズクもマチもそれで良いね。
サヤカはワタシと観るからね。


「ポプコーン食べるか」


聞くとなぜかこちらをキラキラした目で見られた。


「…なんね」

「ね、ね、フェイ今のもっかい言って??」

「……?ポプコーン…」

「フェイってほんと小さいツ言えないんだねっ、ポプコーンて…可愛いー!!」

「な…」


可愛い?可愛いてなんね?


「か…可愛いておかしいね、ワタシ男よ」

「そんなのわかってるよぅ!女っぽいて意味じゃないよ?男の人として可愛いなーって」


うふふ、と楽しそうに笑うサヤカ。


…可愛い?

いやでも、最初戦った時は格好良いと言われた。

格好良いけど、可愛い?
…よくわからないね。

でもサヤカは良い意味で言ったようだから、嫌な気はしないが…。


「あれっ?フェイ照れてるー?」

「べ…別に照れてないね…」

「照れてるじゃーん、可愛いなあ〜もう!」


サヤカはキャイキャイ騒ぎながらワタシの頬を突つく。

…なんかこう、腹の辺りがむず痒い気がするね。









「あー面白かったあ」

「まあまあだたね」

「フェイがまあまあって言うってことは、けっこう面白かったんだね?」

「ま、そゆことね」

「あはは、やっぱりー」


何事にも反応が薄いワタシと違い、サヤカは表情が豊かだ。

歩きながら映画のあのシーンがどうだった、こうだったとか。

たまにキャラクターの声真似や顔真似をしてみせたり、くるくる変わる表情に目が離せない。


「そうだー、私新しい靴欲しいなあ、見に行っても良い?」

「良いね、一緒選ぶよ」

「わーい、フェイに見てもらおー」


買い物といえば女同士で行く方が好みもわかるし気兼ねしなくて楽しい、というのが一般的らしい。


シズクやマチがそう言ってたとサヤカから聞いたし、フィンは女の買い物は長いからウザくてとても着いて行けないと言っていた。


…でもサヤカはワタシが一緒に行くと言うと嫌がるどころか喜んでくれる。
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