フェイタン短編.1
□残さず食べてね?
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なんとかしなければ。
なんとか…。
てなんともできないよ、嫌いなものは嫌いね。
「フェイ…ほんとに体調大丈夫?シズクが言った通り、世界の終わりみたいな顔してるけど」
心配そうにワタシの様子を窺い見るサヤカ。
…うぅ。
そ、そんな顔されたら
これが嫌いだ、食えるもんか!
…なんて言えないね。
「なんだあ、フェイ〜サヤカの飯が食えないってか?」
「ハ!?だ、誰もそんなこと…」
「じゃあ食べなきゃ、ほらほら、サヤカの手料理なんだからさーぷぷっ」
「…シャルナーク、お前後で覚えてるね」
「そうそう、副菜はあたしも手伝ったけど、メインはサヤカが全部したからな」
いつもならワタシがサヤカの側にいて手伝ったりするのだが、マチがいる時は「フェイは休んでて」と言われマチがサブで入る。
そのため今日はメニューがわからず、テーブルに並んでから知ったのだ。
「…あ、もしかしてフェイ、ピーマンの肉詰め、嫌い…とか?」
察したサヤカが、控えめに聞いた。
助かった。さすがサヤカ!
助け舟を出してくれた!
「……ま、まあ、そね」
「そうだったんだ!ごめんね、知らなくて…聞いたら良かったね」
「い、いや…」
サヤカが悪いわけでないのに、謝らせてしまう。
「でも、よく煮込んであるし、苦味も飛ばしてあるから…良かったら騙されたと思って一口だけ食べてみない?」
と、サヤカからの意外な提案。
…そうは言われても…
「……」
沈黙を続けるワタシに、サヤカは眉を下げて困ったように小さく笑った。
「そっか、そんなに嫌いだったら仕方ないね。気にしなくて良いから」
そんな風に言われると…
ものすごく申し訳なくなてきたよ。
責められるより優しくされる方がよほど精神的に応えるね。
「未だにピーマン食えねえとかガキだなガキ!」
「サヤカの作った料理に箸もつけないとかあり得ない。俺なら絶対そんなことしないよ、サヤカ!」
「あ、うん?ありがとうシャル」
「シャルナーク!どさくさ紛れてアピールするないよ!」
「あたしも好き嫌いない人が良いな」
「女性はみんなそうだよね」
メンバー全員敵。だが。
当事者のサヤカだけがワタシをかばってくれる。
「まあまあみんな、誰でも苦手なものはあるから!…そうだ、合挽き肉少し残ってたから肉団子とかしよっかフェイ?」
「!あ、ああ「サヤカ、んなことしなくて良いっつーの!」
やった、と思ったのにフィンが話の腰を折る。
「そうだよ、フェイタンを甘やかすとろくなことないよ。やっぱり旦那にするならなんでも美味しく食べてくれる男が良いよねサヤカ?な?」
「あ、あはは…」
シャルナーク、お前は本気で殺したいよ。
ちょいちょいサヤカに自分アピールしやがて。