長編

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鬼灯の体温を感じるー…



まだ冷たいけど…少し温かいー…



そんなに強くしないでよー…



肋骨折れるかもしれないだろー…



でも…コイツもそれくらい嬉しいのかなー…?




そう思うと、少し笑ってしまったー…

































「鬼灯…。」


「好きです…。」



無表情なのにどこか優しい瞳で僕を見る。それに応えるように柔らかい笑顔を向けると頬に鬼灯の唇が触れた。



なんだか気恥ずかしくなって上目遣いで鬼灯を見る。すると、頭に手を回されて今度は唇が重なり触れるだけの長いキスをした。



「へへっ…。」



唇が離れて照れ笑いを浮かべると、鬼灯の頬が少しだけ赤く染まる。


可愛い…と思ってしまった。



「鬼灯…お前可愛いね。」


「…可愛くなんてないですよ…。」


「え…あ…。ほ…ずき?」



少し部屋の空気がひんやりとした気がして若干たじろぐ。



「んっ…。」



唇が合わさり鬼灯の舌が侵入してきた。ヌメリとした感触にピリッと電気が走るような感覚を覚えてピクンと身体が震える。


それに気が付いたのか、優しく手を合わせてくれる鬼灯。優しさが痛いくらい伝わってきて嬉しさで涙が滲む。


丹念に舌を舐めあげられて歯列をなぞり、角度を変えてまた深い口づけを交わした。



「ほ…ず…っん…ふっ…。」


「可愛いのは…貴方です。」


「んんっ…。」



最後に唾液を流し込まれてコクンと喉を鳴らす。飲み込み切れなかった分が口端から流れ落ちた。



「ほお…ずき。」


「…っつ。」



もう何も考えられない。


頭の中がチョコレートみたいに甘くトロリと溶けて、身体が疼く。


疲れたせいもあって全身に力が入らずに鬼灯にもたれ掛かった。



「僕…鬼灯が…好き。」



改めてそう言うと、鬼灯は目を見開いて僕を椅子の上に座らせる。


鬼灯はというと僕に背を向けて床に座り、頭をガシガシと掻きはじめた。



「鬼灯?」


「自分が止まらないんですよ…。」



近寄ろうとすると、「来ないで下さい。」と低い声で突き放される。



「自分が制御できなくて…貴方を…壊してしまいそうで…。」




今…どんな顔をしているのかな?


鬼灯にしては真っ赤になっているのかな?それとも…戸惑っているのかな?


触れたいー…


鬼灯に…触れたいー…



フワリと後ろから包み込むとさっきよりも温かい温度を感じるー…



嗚呼ー…



お前はもうすぐ人に戻れるんだねー…



鬼灯、わかってる?



僕はお前が好きだって、さっき言ったよな?



だから何されても文句言わないのにー…



優しいね。鬼灯ー…



「良いよ…。」


「白澤さん…?」



耳元でそう囁くと戸惑った声で返される。



「だって僕…お前のことが好きだもん…。」


「っつ…。」



トサッと床に寝転がされて目と目が合った。


相手が鬼灯とはいえ男にのしかかられるのは初めてのことで…少し怖い。


着崩れた着物から覗かせる肢体は女の子の柔らかさではなくて固く引き締まった身体…。



首元に吸い付かれてビクッと身体が跳ねる。舌で舐められると擽ったくて声が漏れた。



「っつ…。はぁ…。」


「…。大丈夫ですか?」


「大丈夫…だよ…。」



本当はちょっと怖いけど…多分そんなこと言ったら鬼灯は止めてしまうだろう。


それに…何人もの女の子を抱いてきて好きな人に抱かれるのが怖い…なんて…それはそれで鬼灯に酷いことを言う気がしてー…



「僕…お前が好きだもん。」



鬼灯にしがみつくと、逆に優しく包み込まれた。



「はぁ…嘘つきですね…。」


「え…?」


「本当は怖いのでしょう?それくらいわかりますよ…。私に隠し事ができるとでも思いましたか?」



少し困ったように頬を優しく撫でる鬼灯。


その優しさで緊張感が緩んで…ポロポロと涙が零れてくる。



「ごめん…。」


「良いのです。貴方なりに頑張ってくれたのはわかりますから。」



そう言ってポスッと胸に引き寄せて泣き止むまで頭を撫でてくれた。



「優しいね…鬼灯…。」


「貴方が優しいのです…。」


その夜は一緒に泊まって、たわいのない話をしていた。なんか、修学旅行の夜みたいだ。



鬼灯の腕の中が心地好くて…いつの間にか僕は眠ってしまったー…





















…。











「寝ましたか…。」



すやすやと安心しきった顔で眠っている彼。額にキスを落とすとコロンとこっちを向いて微笑んだ。



「優しい…か。」



それは貴方でしょう?



生贄だったとか、補佐官とか…そういうことを気にせずに私自身を見てくれたのは…貴方。


とても嬉しかった。


神様の癖に感情を剥き出しにして怒ったりして…私にだけしか見せない部分があるとしたら…そりゃあ期待もしますよね。



こんなに長い付き合いだからこそ…これが恋心だと知ったのも、お互いに気付いたきっかけは同じ瞬間だった筈。



だからこそー…


言えなかったー…


彼を一人にさせるのは…私としても心が痛いー…


鬼神だからこそ一緒に居られたのは事実ー…



では、鬼神から人に戻ったら?



想像…したくなかったー…


彼はこれでも神様だ…人の感情や考え方、優しさ、醜さ…沢山のものを見てきただろうー…


彼にとっても目を背けている部分は勿論あるのだろうけれど…。


そんな彼だからこそ、私は関わることで人というものを嫌でも思い知ることになる。


慈悲とか、誰かを想う心とか、優しさとかー…


鬼にあってはならない感情を彼は沢山持っているからー…



人になれば勿論、転生の順番はすぐに回ってくるー…


そうなれば彼とは居られないー…



阻止したくて…気持ちを伝えないように押し込める。よりによって一番関わってはいけない二人に恋愛感情が芽生えてしまった時点でこの恋は終わりが見えていた。



それでも…あんなに必死に受け止めようとしてくれる彼にどうしても伝えずにはいられなくてー…




「好きです…。白澤さん…。」



そう言って白澤さんと私の手を絡めるー…



額にキスをしてから私も深い眠りへと落ちたー…

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