マギ

□13夜 望郷
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「へえ、お兄さんが倒れていた僕を助けてくれたのかい
えと…りょ…りょ…」

「りょ…?」

「領主さま」

「そう
チーシャンの町の領主、ジャミルだよ!」

うわぁ…あの笑顔、裏がありそうで嫌いだ…

「僕の仕事は、主に町の安全・興業・インフラを整えて町民の生活を守ること………つまり人助け!」

どこが町民の生活を守るだ

守れてねぇーよ

「君を助けたのも領主として当然のことだよ〜」

ウソつけ

自分のモノにしたいだけだろ

「先に行ってしまってはぐれてしまった君の友達も、必ず助け出してあげるからね」

「う、うん…」

ウソつけ

助ける気なんてないだろ

「とにかく、彼の後を追いつつ出口を探そうじゃないか」

迷宮(ダンジョン)】の出口は攻略しないと出てこないよ

『?
どうしましたか、アラジン様?』

アラジンは先頭を歩く二人のことを気にしている

「あ、うん………」

「この二人が気になるのかな?
彼らは僕の…奴隷だよ
大きいほうがゴルタス
彼は北方の遊牧民族出身で…
かつての怪我で口はきけないけれど、とっても丈夫で怪力だ」

丈夫な人間なんていねーよ!

無理してんだよ

「そして、小さい方はモルジアナ
なんと、あの南方の“暗黒大陸”に住んでいたという狩猟民族の末裔だ!
とても鼻がきくし、強靭な脚力も持っているんだよ」

へぇ〜……だから古い死臭がわかったのか……

「二人とも高かったんだよ〜
思いきって買っちゃった!」

「へぇ……」

興味がないような反応するな、アラジン……

「そうだ!
今度、君の奴隷も見せてくれるかな?
ホラ…あの笛の巨人の…

今は、君の友人が持って行ってしまってないけれど……」

嘘つくなや!

てめぇが持ってるだろーが!!

「ウーゴくんは…
奴隷じゃなくて僕の友達だよ?」

『!!』

や、ヤバイ……あれはかなり怒ってる

『アラジン……』

オレは領主に聞こえないように話しかける

「大丈夫…だよ…」

返ってきた言葉はかなり冷たかった…

「そうかそうか」

ハハハと笑う領主は謝る気もない

そしてアラジンが不機嫌になったのも気づいていない

「まあ、そんなことよりこの迷宮も、いよいよ大詰めだ
君の寝ている間に、宝物庫への道がわかったんだよ
一緒に行こうじゃないか」

いや、それはアリババから聞いたからだろ?

てめぇの力じゃねぇじゃん

「うん……

ところでおにいさん、アリババくんは、本当に先に行ったのかい?」

「そうだよ!」

即答…

嘘ついてるの分かるわ…

アラジンは領主を冷たい目で見る

うん、そーとー嫌ってるな…

〈カイ……
お前……領主に会ってから黒くなったな……〉

《気のせいだよ
ただ領主が嫌いなだけさ……
ライズ、心が読める魔法あるか?》

〈…いや…
魔法はないがルフなら出来るだろう…〉

『《わかった
聞いてみる》ルフ達よ…心を読める者はいるか?(ボソッ』

チチッ
「私なら読めるよ!」

『そうか
なら領主の心を読んでくれ
誰かはわかるか?』

チチッ
「もちろん
黒い服の男だろ?」

『ああ、よろしく頼む』

心を読めるルフはオレの右肩に止まる



しばらく歩いて広い場所に着いた

目の前には穴が三つ

「あれ〜〜っ
横穴が三つもあるじゃないか…
竜の食道は三本もあるってことかな…
(「全ては竜の尾に存在する!」ってガキが言ってたな…
どうする〜
翻訳によればこの先が宝物庫で間違いないが…
正しい道をどうやって探そうかな?)」

ルフのおかげで領主の心がわかる

かなり迷っているようだ

オレは何があっても領主を助けない

こいつの罠避けなんてまっぴらごめんだ!

「(モルジアナを使うか?
だが、この先に先人の死体すらなかったら、あいつの鼻は使えない…
ゴルタスじゃ何か見つけても声が出せないからな〜〜)
う゛〜〜〜〜ん
(マギの付き人は僕に力を貸そうとしないだろうから…)」

おっ、わかってんじゃねーか!

「(チッ…
どいつもこいつも使えねーな
やはり僕が自分で行くしかないか!
ゴルタスを罠避けに使えば大丈夫だろう!)
ゴホン」

チチッ
「こんな感じで良かったかしら?」

『ああ…バッチリだ
ありがとう(ボソッ』

チチッ
「どういたしまして」

『さあ、みんなの所にもどりなさい…(ボソッ』

「君たち!
この先は危険だ!
領主たる僕が直々に調査してくるから、女・子供はここで待ってるんだよ

こいつら見張っとけ、モルジアナ(ボソッ」

「……」

領主はゴルタスを連れて穴のなかに入っていった
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