約束の聖戦SS
□胸中2
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胸中2
隊長の笑顔が忘れられない。
笑ったときの、あの天使みたいな顔が見たい。
なんか、あの日から余計に避けられている気がする。
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避けられているみたいだから、もっと執拗に追い回してみた。
変なところから顔を出すと、隊長はぎょっとして俺を見た。
ゴミ箱の中から出てきてみたり。
花壇の中から出てきてみたり。
食事中、テーブルの下から出てきてみたり。
お風呂の中に沈んで待ち伏せしたり(隊長があと少しでも遅かったら溺死してた…)。
俺が変なところから登場するたび、隊長はぎょっと目を見開いて驚いてくれた。
俺の見たい顔ではなかったけど、人形みたいに無表情な隊長が表情を変えるだけで、俺は満足だった。
最初のうちは、ね。
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やっぱり隊長の笑ってるとこが見たい。
俺はそう思った。
あの猫みたいに、俺を猫だと思って、俺の目の前で俺のためだけに笑ってくれればいいのに。
一度そう思ってしまうと独占欲が生まれてしまい、隊長が俺のものになればいいと思い始めた。
執拗に追い回したら、隊長にストーカー扱いされた。
なんか、怒られた。
でも、怒った顔が見られた。
俺のために怒ってくれるの、嬉しい。
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隊長のちょっとした仕草や言動が気になる。
隊長がふいに髪の毛を弄ったり、瞬きをしたり、眠そうに欠伸をしたり、そんな仕草を見るたびに、俺は動機がした。
なんでだろう。
隊長をストーキングしすぎて、寝不足なのかな。
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隊長に今度の任務の資料を貰いに行った。
資料をもらうときに指先が触れて、なんだかほっぺたが熱くなった。
そんな俺を、隊長は「風邪か、大丈夫か」ってぶっきら棒だけど心配してくれて、あろうことか俺の額に手を乗せた。
熱がないか確かめるためだったんだけど、俺は隊長に触れられていることばかり意識してしまって、そしたら体温が上がった。
熱中症になったみたい、頭が爆発しそうなくらい熱い。
隊長の真っ青な瞳がすぐ目の前にある。真っ直ぐな目で、俺を、俺だけをその瞳に映している。
隊長の冷たい手。ひんやりした隊長の手のひらが、俺の額から熱を奪っていく。
熱と一緒に、違うなにかも持っていかれそうな気分になった。
動悸が苦しくて、俺が笑いながら「大丈夫じゃないかもー」とか冗談混じりに言ったら、隊長は本当に心配してくれた。
なんか、心配してくれてる隊長がすごく可愛くて、それを見てたら余計に動悸が酷くなった。
ほんと、なにこれ、病気?
隊長見ると動悸と熱ががやばくなる病?
……………あ、違う。
病気だけどそんな長い名前じゃない、これ。
やっと俺は自分がなんの病気なのか把握したところで、隊長にそれを告げてみた。
もしかしたら、隊長がオーケーしてくれるかもしれないだろ?
「隊長。俺、実は、恋の病なんです」
「は…?」
俺を心配して、辛そうだからとわざわざ自分の部屋のベッドを貸してくれようとした隊長は、きょとんとして俺を見た。
ふざけるなって怒られたけど、俺はすごく真剣に言った。
「俺、隊長のこと、好きみたいです」
わざわざ俺が「恋の病」って言ったのに隊長は勘違いしたみたいで、「あ、あぁ、ありがとう…」て、戸惑いながら返してくれた。
ちょっと嬉しそうな顔で、でも笑ってなくて、照れてる感じだった。
あ、この顔もいいな。
そんなことを思いながら、俺は隊長の間違いを正す。
「好きって、軍人として尊敬するとか、そんなんじゃないですよ。俺の好きは………恋愛感情の好きです」
そう言ったら、隊長はまたぎょっとした。
今日はいろんな隊長が見れるな………そう思っていたら、隊長が、僕は男だ女じゃないって言ってきた。
そんなの分かってる。
俺だって、男を好きになるなんて思いもしなかった。
でも、現に今、俺は隊長に恋をしている。
「それでも好きです、隊長」
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その日から、更に避けられるようになりました。
まぁ、いきなり告白されたら動揺もするよな。よりによって、同性だもん。仕方ないよ。
でもさ、そこまであからさまに避けなくても……。
もう!
そんなに逃げたら、追いかけたくなっちゃうでしょうが!
そんな気持ちで、俺は隊長につきまとう生活を始めた。
最初は逃げてばかりだった隊長も、そのうち諦めてしまったのか逃げるのもやめてしまった。
おかげで俺は隊長のそばにいられるんだけど、やっぱり隊長は俺のこと避けてるみたい…。
食事のときも、仕事のときも、プライベートのときも、隊長は俺の言葉をガン無視。
いくら俺でも、ちょっと傷つく…。
告白してから一週間。
ずっとこんな調子。
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あーあ。
俺の恋が叶う日は、来るのかなぁ…。
ま、きっといつか隊長も俺のこと、ちゃんと考えてくれるよね!
end
2014.03.03
2016.08.30 修正