暁学パロ(鳴門)

□お昼ご飯
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壁に掛けてある時計の針はあと5分でお昼休みだと言うことを知らせていた。


机の冷たさを頬に感じながら、ぼんやり今日のお昼ご飯について考える。

今日の弁当は何が入っているのだろう。
ハンバーグがいいな。タレがかかってない、安そうなやつが。


弁当はお母さんが姉と私とお父さんの分を毎朝作ってくれる。

だから中身は開けてからのお楽しみ。






「それじゃあ今日出した宿題は明日、答え合わせをする。」



現代文担当のペイン先生が授業が終わる時の台詞を言った。




お昼ご飯だ、お昼ご飯。
眠いけど起きなきゃ。




「綺一、当てるからな。」



こっちなんて見てなかったのに、いきなり自分の名前を出された。


びっくりして
ガタッと膝が机の裏にぶつかった。

ペイン先生はたまにこうして私に、当てるぞと宣告してくる。
今日は久々だったので動揺し過ぎた。恥ずかしい…。


返事を返す前にペイン先生は教室を出ていった。





「ダッセーな、綺一。」


前から聞こえた声に、私は右足で椅子の裏を蹴る。


「明日当たるぞ、教科書貸せ。」

右から聞こえた声に私は素直に教科書を出す。
どーも、と一言付け加えて。


「気に入られてんなぁ!綺一ちゃんはよぉ!」

右前から聞こえた声は無視。


「ほら、印付けたとこから最後までだ。」

「悪いねー。サソリくん。」


私の右隣には、赤髪の男子生徒のサソリの席がある。
頭も運動神経もいいけど、愛想の無さとその見た目で、女子からはモテ、男子からは怖がられている。


「さっさと飯にしよーぜ、うん。」


私の前には、金髪の男子生徒、デイダラの席がある。
長い髪の一束を結んでいるよくわからない髪型をしている。
デイダラは勉強は人並みで運動神経はいい、クラスでも男女ともにモテる。
サソリとは芸術仲間らしい。



「俺は祈りを捧げてからにするぜぇ。」

私の右前に席がある飛段。銀髪オールバックで女子にモテモテ。
しかし、勉強はさっぱり、おまけに変態。運動神経はいいほう。
お昼ご飯の前はいつも祈ってから食べる。



私の席は1番左後ろから一個前の席。特等席にはならなかったが、ここはここでいい場所だ。



「じゃ席くっつけようか。」


私は机を少し持ち上げ、そのまま右にくるっと90度動かしてサソリの机と合体させる。

私の左隣りにデイダラも机を移動して来た。


机をくっつけるのは中学からの癖なので、3人から文句を言われたことはない。


飛段はまだ祈っているらしい。

待つ?いや、お腹空いたし。



「食べよ、食べよー」


サソリは赤の風呂敷、デイダラは黄色の弁当鞄、私は水色の巾着に弁当が入っている。



「あ、デイダラ今日はおにぎりなんだ。」


いつも弁当箱のデイダラが今日はラップおにぎりだ。珍しい。

「起きるの遅くなっちまったから、急いで作ったんだ、うん。」


おにぎりを頬張りながらデイダラは寝坊したことを教えてくれた。



「あ、ハンバーグ入ってない。」


今日の予想はハズレ。
ハンバーグの気分だったのに、シューマイが入っていた。



「そのシューマイと交換ならいいぜ。」



と言いつつ、さっさとハンバーグを私の弁当に放り投げ、シューマイを奪って行ったサソリ。



「やっぱハンバーグはタレなしだね。」



この安そうな、でもおいしいハンバーグが大好き。
サソリと私は同じメーカーのハンバーグらしい。



「それ、わかるぜ。」



サソリも同じことを思っていたらしい。

私はサソリにグーを突き出すと、サソリも同じく手をグーにして、コツンと合わせた。




「綺一、お茶持ってねーか?」

デイダラはお茶を忘れたらしい。



「はい、これコンビニで新しく出てたやつ。渋みと後に残る甘みはこっちがおいしいよ。」


何気にお茶が大好きなので、お茶好きのデイダラと回し飲みしたりする。



「これCMしてやつだ!
飲んでみたかんだ!うん!」



差し出したお茶を味わうように飲むデイダラ。


「うん……、うん!
確かに強調しすぎない渋みと、自然な甘み……この前のよりいいな、うん。」


気に入ったらしい。



「さぁ、食うぜぇえ!」


飛段の祈りが終わったらしい。

いつも祈りをしてからなので、私達とテンポがズレる。


「落ち着いて食べてよ、飛段。」


「何だよ誘ってんのかぁ?
綺一ちゃんよぉ!!」



また勘違いしている、この変態は。
なぜモテる。


「いいから、静かに食べて。」


「ゲハハァ!放置プレイかぁ?
それもいいなぁ!!」



サソリもデイダラも私も慣れているので、無視だ。








「いいなぁ…サソリくんとお昼ご飯。」
「私同じお茶持ってたのに〜。」
「飛段様、今日も美しいわぁ〜。」




ヒソヒソと聞こえる教室の女子の声。
別に恨まれていたりはしないが、なぜか羨まれる声が耳に届く。

デイダラとサソリはわかるが、飛段がモテる要素が見つからない。
 

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