暁学パロ(鳴門)
□イタチ先輩
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夏休み突入6日目。
7月最後の一日をどう過ごそうかと考えながら1人で街の商店街を歩いていた。
ちなみに夏休みは8月31日まで。
「うーん…本屋巡りにしようか、ゲーセン巡りしようか…。」
どちらも眺めるだけでお金は使わないけれど。
私の家はお父さんがとても厳しい人でお母さんはとても優しい人だ。
前に私が、バイトしたいんだけど。とお父さんに言ったら、
高校を出たら精一杯働けと言われた。
何でかは分からないから今度聞いてみよう。
私のお父さんはお金にうるさい人だけど、稼ぐのはまだ先にしろと言う。
今度聞いてみよう。うん。
「本屋巡りかな。」
立ち読みが出来る本屋を巡ることにした。ゲーセンはまた今度にしよう。
「気に入ったのがあれば一冊くらいなら買っちゃおう。」
数分歩いた場所の本屋へ入る。
冷房が効いていて汗も乾いた。
「ちょっと怖い本のコーナー行こ。」
夏と言えば怪談。怖いもの見たさで怖い本の方へ向かった。
「いっぱいあるなぁ。」
やはり夏だからだろうか。白い顔の女の人や、手だけ写っている表紙など、どれも寒さを表現する青や黒の背景で印刷されている。
「わーぉ、こりゃ刺激的。」
表紙をピラリとめくると真っ赤になった目を見開き、口が真っ青になった何とも目に刺激的な女性の写真が。
「まぁ、作り物か…。」
開いた瞬間はドキリとするが、これは作り物と思えば怖さも薄れる。
「次は、隣の赤子…ふむふむ。」
タイトルからしてお隣さんの赤ちゃんの事だろうか。
どんな内容なのかとページを開きかけたところで、隣に人が来た。
この人も怖いもの見たさかな?
と思って、チラッと隣を見たら、バッチリ目があってしまった。
「イタチ先輩じゃないですか。」
私の隣に来たのは1学年上の先輩である、うちはイタチさんだった。
「偶然だな。涼みに来たのか?」
「はい、まぁ、冷房と怖い本とダブルでですけど。」
ここにいると言うことはイタチ先輩も怖い本を見に来たのだろうか。
「あの、イタチ先輩も怖い本を見に?」
さっき私が見ていた本を手にとっているイタチ先輩。
「あぁ、夏だからな。怖い本でも買って、サスケに読み聞かせてやろうと思ってな。」
怖い本を読み聞かせるのはどうかと思ったが、弟思いのいいお兄さんだ。
「サスケくん喜ぶといいですね。」
「……あぁ。」
さっき私が見ていた刺激的なページを見ながらイタチ先輩は控えめに返事をした。
「じゃあ、私はこれで。」
友達ならここで話が広がるのだが、如何せんお隣は先輩だ。
早々に次の書店へ行こうと思い、イタチ先輩に一言声をかけた。
「まぁ待て。
綺一、どの本がいいと思う?」
まさかの本選びを強要されるとは思っていなかったのでびっくりする。
「あ、え、えーっと。
この本なんてどうですか?」
そう言って、隣の赤子を手に取る。
「隣の赤子?」
イタチ先輩は私から本を受け取るとページをめくった。
「なんか怖そうじゃないですか?
サスケくんも喜ぶと思いますよ。」
果たしてサスケくんが喜ぶかは分からないが表紙からして怖そうだ。
「…ほぅ。ならばこれにしよう。」
私は内容は見てなかったけれど、イタチ先輩はオッケーの様子。
「あ、じゃあ私はこれで。」
サスケくんへの本が決まった様なので私はさっさと退散する。
「まぁ待て。
お礼に美味しい団子を奢ってやる。」
「え、やった。」
食べ物の事では遠慮しないので、素の返答が出てしまった。
「会計を済ませてくる。外で待っていろ。」
イタチ先輩の会計が終わるまでの少しの間、外の日陰で待つことにした。