お菓子の魔法


□小さなパートナー
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ベージュに赤のラインの入ったブレザーの制服に身を包み、入学式の看板が立てられた聖マリー学園の校門をくぐる

校門から校舎までは些か距離があるが、門から建物までの道のりが長いのは実家も同じなので特にどうということはない
校舎に向かって真っすぐ進んだ先に、羽の生えた精霊の像がある
台に掘られている説明書きを読んだところ、これはスイーツスピリッツの女王様の像らしい

女王様の像を通り過ぎ、校舎に入ろうとすると、目の前に緑の髪をした男子生徒が薔薇の花を持って現れた

「はじめまして、僕は花房五月。これ、お近づきの印に」

そう言って差し出された薔薇を受け取る
同年代の男性と関わることは、これまでの人生で皆無だったが、彼の様なタイプは特殊だとみても間違いはないだろう
しかし、そこは箱入り娘の純粋培養お嬢様
そんなことを考えているなど、露ほども感じさせぬ完璧な仕草と笑顔で挨拶を返す

「ごきげんよう。素敵な薔薇をありがとう。私(ワタクシ)、小笠原祥子と申します。お見知りおきを」
「よろしく」

ウィンクまで投げかけて去っていく
どうやら新入生すべての女子生徒に声を掛けている様子
今までの人生における同世代の男性との関わりが皆無な祥子も、驚きよりも先に呆れが来てしまった

入学式より先に、男子・女子各寮に案内された
寮は中等部・高等部と別れていて、案内された寮は当然、中等部女子寮
普通、バス・トイレ付の二人部屋
だが、学園へ毎月多額の寄付をするお金持ちの家の生徒は、バス・トイレに加え、キッチン付きの一人部屋の特別室に入ることも出来る
小笠原グループ会長の孫娘ともなれば、祥子は当然後者
寮二階一番奥の一人部屋に入る事になっている
ちなみに美夜さんは特例で自宅から車通学しているそうだが、小笠原邸から毎日通うのは距離を考えても不可能に近い
祥子にも、同室の友人というものに、多少の憧れはあった
が、祖父の希望であるのなら、わざわざ逆らう程の事でもないと、甘んじて受け入れた
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