お菓子の魔法


□チョコレートケーキ
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スイーツの実習
今日はチョコレートクリームでのデコレーションをしているのだが、先ほどから天野さんがボケっと中を見つめたまま、クリームを絞っていたので、デコレーションがひどいありさまになっていた

「ひえぇ〜!ど、どど、どうしよ〜う!!」
「凄えな。調理実習中にボケ〜っと他のこと考えてられるなんて、すっげぇ根性」

慌てて直そうと試みる天野さんに、樫野君の嫌味がとぶ

「樫野、あんまりいちごちゃんを虐めるなって」
「デコレーションは失敗したけど、ジェノワーズは上手に焼きあがってるよ」
「転校してきた当初に比べたら、すごい上達だね」

樫野君に嫌味を言われて、小さくなってしまった天野さんに、花房君と安藤君が交互に声を掛ける

「甘いな。この程度で上達なんて、甘すぎる」

樫野君の厳しい評価に、天野さんは膨れている

「まぁ、ど素人から初心者くらいにはなったんじゃないかしら?」
「小笠原さん…ありがとう!!」
「対して褒めてないだろ、それ」

顔を上げた天野さんは、ふと樫野君がデコレーションを終えたケーキを目にする

「それって、樫野がつくったの?」
「あぁ」

樫野君のケーキは、チョコレートが祥子や他の二人とは比べ物にならないほどの艶と輝きを持っていた

「すごいよなぁ」
「チョコレートのスイーツなら、樫野の右に出る者は居ないよ」

花房君と安藤君の賛辞を聞き、天野さんは目を輝かせて、「いつかこんなチョコケーキを作りたい」というと

「天野には百万年経っても無理」

真顔で返されてしまい、天野さんはとても悔しそうにしているが、口でも実力でも正面切って反撃できない為、大人しくしていた
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