お菓子の魔法


□運命のプリン対決
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調理実習中、昨日Bグループの女の子たちに胡桃拾いに行こうと騙された天野さんが、森の中に置いてけぼりにされ、森をさまよった末に高等部女子寮にたどり着き、天王寺真理生徒会長に保護されたという話をしていた

「でも、ほんと凄いよ天野さん」
「天王寺会長の部屋に招かれるなんて、中等部じゃいちごちゃんくらいじゃないかな」

安藤君と花房君の言葉に、天野さんは照れたように

「いや〜招かれたって言うより、助けられたって感じで」

というと、デコレーションの作業をしながら樫野君が

「天野はアホだもんな。胡桃の季節はとっくに終わってるのに、森に入って迷子になるなんて、そんなのと組んでるオレ達って、ボランティアだよな」

などと言ったので

「あぁそうですか!だったらオジョーさんと組めばっ!」

と天野さんが樫野君に爆弾発言をした
珍しく、樫野君のデコレーションが目も当てられぬ酷いありさまになった

「オ、オジョー…」

カタカタと青い顔で震え始めた樫野君を、天野さんは不思議そうな顔で見ている。どうやら“オジョー”こと“小城美夜”さんを知らなかったらしい

「そんなにトラウマになってるのね樫野君…。まぁ気持ちは分からないでもないけれど、悪い人ではないのよ」
「え?何があったの?オジョーさんと」

祥子が天野さんの隣に回って囁くと、それに返した天野さんの“オジョー”の単語に地獄耳の如く樫野君が反応し

「やめてくれー!!」

と叫んだ

「いちごさん。あとで場所を変えていたしましょう?樫野君も落ち着いて。これ以上騒ぐと減点されてよ?」

樫野君は青い顔のまま手をわなわな言わせながら黙った



放課後、すっかり覇気を失くした樫野君がよたよたと歩いている
その前を行きながら、花房君と安藤君が天野さんに“オジョー”について話して聞かせているのを聞き流しながら、祥子は樫野君の隣を歩いていた

花房君、安藤君は、美夜さんの実家であるシャトー製菓についてや、ケーキグランプリで組んで散々な目にあったことを話していた

一度、ケーキグランプリの話が出た時に、天野さんがこちらを振り返った

「でも、どうして小笠原さんと組まなかったの?」
「美夜さんに譲れと言われると断りにくいのよ。私の場合は家同士のしがらみもあるし。何より美夜さんが背中を押してくれなければ、私はこの学園に入ることはなかったかもしれないしね。そういう意味でも、美夜さんに強く出られないところがあるのよ」
「小笠原さんも、お嬢様…なんだよね?オジョーさんとはどっちの方が…」
「格式高いかって?あまり家柄についてとやかく言うのは好きではないけれど、シャトー製菓より小笠原グループの方が歴史も権威も力もあるのは確かよ。でも、そんな事は関係ないのではなくて?」

祥子が言葉尻を強めたことで、天野さんは委縮して「ごめん…」とつぶやいた

「祥子。いちごだって悪気は無かったんだよ。祥子がオジョーのこと好きなのは僕も知ってる。でも、祥子が自分が樫野たちと組んでれば出来上がったスイーツを台無しにしちゃうような事は無かったって悔しがってたのも知ってるよ」

セルがポケットから出てきて祥子に言った言葉を聞いた樫野君が若干浮上してきた

「今年は天野さんと出場なさったら?私も可能な限りのサポートをするから」
「確かに、いちごちゃんとならやれるかも」
「え?私?」
「うん!そんな気がするよ」

花房君、安藤君も同意しその気になってきた天野さんの肩を樫野君が叩く

「その前に厄払いだ!オレに付き合え!!」

厄払いと言って樫野君が祥子、天野さん、花房君、安藤君を引っ張ってきたのはサロン・ド・マリーだった
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