お菓子の魔法


□選択肢
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聖マリー学園校門前。祥子はセルと共に実家からの迎えの車に乗り込んだ。

「祥子!あれ、いちごじゃない?」

聖マリー学園前のバス停にいちごが水色のキャリーバックを持って座っている。

「いちご、皆に冷たくされたのがショックで学園を辞めるつもりなのかな?」
「辞めるも残るも彼女の自由だわ。放っておきましょう」

運転手に不振がられないように、出来るだけ声を抑えて話していた。

「でも祥子‥‥」
「少なくとも、私に出来ることは何も無いのよセル」

セルは項垂れて祥子の肩に乗ったが、後ろを振り返ってギリギリまでいちごを見ていた。


学園を出発したのが夕方だった為、祥子たちの車が小笠原邸に到着した頃には辺りは真っ暗になっていた。

「おかえりなさいませお嬢様。奥様、お嬢様。祥子お嬢様がお着きになりましたよ」

邸に入ると、住みこみで働いているお手伝いさんの吉野さんの声が響く。

「おかえりなさい祥子さん。さ、お部屋に荷物を置いていらっしゃい。お夕食にしましょう」
「はい、お祖母様」

きちっとした着物で迎えに出てきたのは祖母の彩子。

「お父様と融さんは今日は帰れないんですって。お話は明日にしてほしいそうよ」

中学2年の娘がいるとは思えないほど、若々しく、稀に少女の様な一面も見せる母の清子。
聖マリーに入学するまでの12年間はずっとこの家で過ごしていた。


「夏休みとお正月には来たけど、何でもない時に祥子の家に来るのは初めてだね」
「そうね」
「祥子のお母さんの言ってたお話って何?」
「さあ、何かしら。私も詳しくは聞かされていないのよ」
「そうなの?」
「ええ」

祥子の部屋に来て、やっと普通にセルと話すことが出来る。自分には見えないし聞こえない物と、娘が話しているだなんて知ったら、特にお母様は卒倒してしまうだろう。


ダイニングに下りて祖母と母と夕食をとる。この食事は、祖母や母が作ったものではなく、小笠原家の料理人が作ったものだ。プリン対決の為に祥子の到着が遅かった為、普段より夕食の時間が大分遅くなってしまった。
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