お菓子の魔法


□七年目のクリスマス
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聖マリー学園では、クリスマスに近くの商店街の特設会場でクリスマスケーキを売り、その売り上げのほとんどを、恵まれない子供たちに寄付するというチャリティーが行われる。
今は調理室でクリスマスケーキを作っている。

ちなみに精霊たちは、スイーツ王国のクリスマスの準備にかりだされて留守にしている。

安藤君は和栗のブッシュ・ド・ノエル
樫野君は光沢の見事なチョコレートケーキ
花房君は煌びやかな装飾のブッシュ・ド・ノエル
祥子はシフォン生地を土台にしたデコレーションケーキ
そして、いちごさんの目の前にはクロカンブッシュ。すなわちシュークリームの山というか塔をクリスマスツリーに見立てて飾りがつけられ、頂上には星が乗せられている。

「天野。クロカンブッシュはクリスマスケーキじゃねーぞ」
「確かに、本来はウェディングやお祝い事なんかに作られるケーキだからね」
「でも、クリスマスツリーみたいでアイデアはとてもいいと思うよ」
「俺も出来はいいと思うけど、普通クリスマスには作らねえよな。しかも一品もの」
「ぴよぴよ幼稚園のボランティアにはいいかもしれないけれど、大きなパーティでもやらない限り、クロカンブッシュを買おうとは思わないと思うわ。それに、持ち帰るのに困るでしょうね。今更だけれど、せめてプチシューで作るべきだったと思うわ」

其々のコメントに、いちごさんは膨れ顔。

「でも、こんなにきれいに仕上がっているのだから、買ってくれなくともチャリティーの客引きの役割を担ってくれそうだわ。最後まで売れ残ったら、自分達で食べることになるでしょうし、分けやすいからパーティの後のお土産にはぴったりなのではなくて?」
「おまえのそれはフォローしてるつもりなのか?」

樫野君と祥子の会話のなか、安藤君と花房君に慰められたと思われるいちごさんは、張り切ってクロカンブッシュを持ち上げた。

「先生に見せてくる!」
「危ないわよ。先生に来て頂いた方が――」

ガシャン!

祥子が言い終わる前に、いちごさんは盛大にクロカンブッシュをひっくり返した。

「あ〜!折角上手に作れたのに!」

床に落ちていたバナナの皮で滑ってしまった様だ。

「また作り直すには時間がないよ」
「僕たちも手伝うから、簡単なケーキを作り直そう」
「ていうか、バナナの皮に滑って転ぶやつ、初めて見たぜ」
「注意を怠ったいちごさんも悪いけれど、床にゴミを落としたままにするだなんて言語道断だわ。人としてどうかしてるわよね」

結局、いちごさんのケーキは見事なクロカンブッシュから装飾の地味なロールケーキへと変更を余儀なくされた。
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