短編
□昼を知った夜
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まずはドンファンの提案で鬼ごっこをすることにした。
「じゃあ、僕が鬼やるから、逃げてね」
「うん!絶対逃げ切るからね!」
「10数え終わったら追いかけてね」
「うんっ!じゃ、いーち、にー、」
ヨーギラスが10数えている間に皆散らばっていく。ヨルノズクもとりあえずヨーギラスから離れようと翼を開いた。が、
「あーー!!」
「!」
「ヨルノズク飛んだらダメだよ!捕まえられないよ!」
「す、すまない・・・」
ヨルノズクは翼を閉じた。よく見れば、ヘラクロスも飛ばずに走っていた。
(・・・走るのは苦手なんだが・・・)
普段飛んでいるヨルノズクは走ることが苦手だった。しかし、早くしないとヨーギラスに捕まってしまう。ヨルノズクはとりあえず、その場を離れた。
「さて、どうするか・・・」
「ドンファンタッチ!」
「む?」
声がした方を見ると、ヨーギラスがドンファンを捕まえていた。
「あー!捕まっちゃった!」
「じゃ、次はドンファンが鬼」
「はーい」
ドンファンは10数え始め、ヨーギラスは走って行った。
(次はドンファンが鬼か・・・)
「あ!ヨルノズク見っけ!」
「!」
ボーッとしている間にドンファンに気づかれてしまった。ヨルノズクは反対方向に走り出す。
「・・・」
「逃がさないよー!・・・!それっ!!」
「!?」
なんとドンファンは間を詰めるとこちらに向かって飛びかかって来た。その反動でヨルノズクはうつ伏せに倒れこんでしまった。
「・・・」
「へへっ、ヨルノズクタッチ!」
「お前はいつもこんな捕まえ方をしているのか?」
「うーん・・・時々してるかな?」
「・・・」
「もしかして痛かった?ゴメン!」
「平気だ。何ともない」
「そう?じゃ、次はヨルノズクが鬼だよ!」
そう言ってドンファンは走り去ってしまった。ヨルノズクは服についた汚れを払って誰かを見つけるため走り出した。
「あ!ヨルノズク!」
「・・・貴様か」
ヨルノズクが探している途中でヘラクロスは声をかけた。すると何の戸惑いもなく近づいて来た。
「どう?楽しんでる?」
「・・・」
「ドンファンに飛びつかれたの?服少し汚れてるよ」
「・・・」
「あ、ねえ今誰が鬼か知ってる?」
「・・・私だ」
「へ?」
「今は私が鬼をやっている」
二人の間に沈黙が流れた。そして、
「失礼しました!」
「逃がさん」
こうして、二人の追いかけっこが始まった。ヘラクロスは必死で逃げるが、ヨルノズクは徐々に距離を縮めていく。そして、
「・・!」
「わ、っと!」
ヨルノズクはヘラクロスに追いつき、捕まえることができた。ヘラクロスは苦笑してヨルノズクを見た。
「あはは、捕まっちゃった」
「ふん」
「ヘラクロスー!ヨルノズクー!」
そこにドンファンとヨーギラスがやって来た。
「どうした?」
「ズルッグがお花持って来たんだって!」
「行こっ」
二人に言われ、そこに向かうと、ズルッグが花を沢山持っていた。
「うわ〜。綺麗だね!」
「ん!あげる!みんなにも!」
「ありがと!」
ヘラクロスたちは花をもらうと嬉しくなった。ヨルノズクもその花が綺麗だと思っていた。すると、ヨーギラスは何か思いついたように花をいじっている。
「何やってるんだ?」
「はい、花冠っ」
「お〜!ヨーギラス上手!僕も!」
ドンファンも花冠を作り始め、ズルッグも真似をしている。ヘラクロスとヨルノズクはそれを大人しく見ていた。しばらくして、
「できた!」
「う!」
「お〜、上手に出来たな!」
「えへへ〜♪」
ヨーギラスはヨルノズクの方に行くと、その花冠を頭に乗せた。
「わ、ヨルノズク似合うっ」
「ホント!綺麗!!」
「・・・そうか?」
自分ではよくわからないが、子供達にそう言われて少し照れ臭くなった。ヘラクロスの方を見ると、彼も同じように花冠を頭に乗せていた。
「ヨルノズクすっごく似合ってるね!」
「貴様は似合っていないな」
「え!?ひど!」
そのまま色々話をしていて、あっという間に日が暮れてしまった。
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