短編

□彼に会いに
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「あ、キングラー!」

誰かに呼ばれ、声がした方を向くとオオスバメとヒノヤコマがいた。いつもならまだ昼食中の二人が何故外にいるのか、キングラーには分からなかった

「お前ら、どうしたんだ?昼御飯は?」
「そんなことよりキングラっち!ピジョっちセンパイの所に行くんだろ?」

何で知ってるんだ、と思いながらもそうだと頷くと、二人は顔を合わせてにかっと笑う。キングラーはわけがわからず二人を見ていると、オオスバメとヒノヤコマがいきなり身を乗り出してキングラーに言った。

「キングラー!ピジョセンパイと仲良くしてくださいね!」
「ピジョっちセンパイと幸せにな!」

それだけ言うと、それじゃ!と言って研究所の方へ飛んで行ってしまった。ポカーンとしていたキングラーだが、用を思い出し森へと足を進めた。途中でヒノヤコマの言ったことを思い出し真っ赤になってしまったのはいつものことである。

ようやく森に着き、辺りを見渡す。見当たらないので名前を呼んでみるが現れない。入れ違いかと思っていた時、少し先から羽音が聞こえてきた。それは、自分がずっと聞きたかった音で、体が震えて動かなかった。

「よ、結構久しぶりだな、キングラー」

自分が会いたかった彼は自分の目の前に降りてきて、変わらぬ少し軽い口調で言った。何も変わっていないことが嬉しくて、いつもとは違う意味で顔が熱くなる。

「お前から来るなんて珍しいな。どうしたんだ?」
「…差し入れ持ってきた」

そう言って、菓子の入った箱を差し出す。それを見たピジョットは嬉しそうな顔をして、いきなり抱きついてきた。

「サンキューキングラー!嬉しい!」
「〜〜〜!!??」

突然のことにキングラーは耳まで真っ赤になり、言葉にならない声をあげていた。ピジョットは気持ちを行動で表すところがあり、キングラーはそれにいつも悩まされていた。

「一緒に食べようぜ」

ピジョットはキングラーの手を引いて座れる場所まで連れて行った。渡された箱を開けると、クッキーやカップケーキが入っていた。

「美味そう…いただきます」

きちんと手を合わせ、ピジョットはクッキーを頬張った。キングラーはその様子を緊張しながら見ている。

「うっま!やっぱキングラーの作った料理は最高だな!」

目を輝かせて賞賛の言葉を送るピジョットにキングラーはホッとした。

「久しぶりだから余計に美味い」

その言葉にキングラーは今回のムクホークの提案に感謝した。喜んでもらえてよかったと思った。ピジョットから渡されたクッキーを自分も食べ、ピジョットと同じ気持ちになったのが少しおかしく思った。

「なあ、また差し入れ持って会いに来てくれるか?」

それは、また忙しくなるかもしれないという前提もあり、キングラーから来て欲しいという二つの意味があった。キングラーの答えは決まっている。しかし、ピジョットには素直になりきれないキングラーは照れ隠しでこう言った。

「…寂しくなったら、いいよ」

キングラーのその言葉に、ピジョットは笑みを浮かべた。ピジョットには分かっていた。キングラーは自分が少し帰ってこないだけで寂しくなること、頼めばいつでも会いに来てくれるということを。

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