狩人
□星と月とハンターたちの宴U
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「おい、何この変なにおい」
「ヤーナっていう木の木の実ですっごくきついにおいがすることで有名。で、さっき足で踏んで粉々にしたからよりにおいがきつくなる」
あからさまに鼻までつまんで言ってくるものだから、むっとして少々つっけんどんに答えてしまった。
しかし、キルアは気にした風もなく怪訝な表情でこちらを見ていた。
「はぁ?なにそれ・・・っていうかさ、もしかしてさっきゴンにも同じの渡してた?」
「そうだよ。今の説明で良く分かったね。」
「へー」
府に落ちないといった表情のキルアだったが、何を思ったのか急にこちらを向いた。
その表情は口の端をにやりと上げ、茶目っけたっぷりのいたずら顔だった。
「で、なんでそんなの持ってんの?」
「うーん・・・たまたま?」
「なんだよそれ」
首をかしげながら話す私の返答が気に入らなかったのか、半眼になって追求して来たので特に隠すこともないかと素直に話すことにした。
「ヤーナの木の実ってにおいがきついけど、調合すると痛み止めとか軽い毒の解毒剤になるんだよ。一応試験だからと思って持ってきてたんだ」
「へー・・・知らなかった」
「さっきも言ったように、においがきついから敬遠されがちなんだよね」
キルアは興味なさそうに前を向いているが、こちらの様子をそれとなく観察しているようだ。
なるほど、頭の回転が速い。
探りを入れつつこちらの出方を窺い、相手が信用に足るか見定めているのだ。
内心で二度目の感心をしながらも、決して尻尾は出さない。
頭の回転は速いがまだまだ爪が甘い。
キルアが何か言ってくる前にこちらから話題を変えた。
「まぁ、ゴンって野生児っぽいし、このきついにおいだったら辿ってこれるんじゃ?って思ってね。だからそんなに心配しなくていいんじゃない?」
「別に、心配してるわけじゃ」
「ふーん?」
「なんだよっ」
「ん?素直じゃないなーって」
にっこり笑ってそういえばキルアはぐっと詰まってそっぽを向いてしまった。
どうやら駆け引きは私の方がまだまだ上みたいだ。
地下道から比べると走りづらかったが、マラソンはあっという間に終わった。
次の試験会場である建物の前でキルアと一緒にゴン達を待っていると、レオリオを担いだピエロが向かってくるのが見えた。
途端にさっきの狂気を思い出して寒気がした。
レオリオを担いできたことから絶対に何かがあったのだろうが、上半身裸の男を担いで来るピエロという光景は何とも言えないものだったため、思いっきり目をそらしてしまった。
「どーかしたのか?」
「いや・・・私は何も見なかった。そういうことにしよう」
「はぁ?」
私の一人言にキルアが怪訝な声を出した。
そうだ、お姫様だっこで連れられて来るより何千倍もましだ。
一瞬でもばかなことを考えその光景を想像してしまい、その場でうめき声をあげて頭を抱える私のそばでキルアは嫌な顔をしつつ冷やかな目線を私に送るという芸当を披露していた。
結局、ピエロとお近づきになりたくない私はゴンとクラピカが来るまでレオリオを放置し続けたのだった。
レオリオが無事だと分かっていたから放置したのだ、と心の中で言い訳しながら。
そして、2次試験が始まった。