狩人

□星と月とハンターたちの宴X
3ページ/7ページ


「えーとね、詳しくは言えないんだけどこの杖が私の一部だって言うのは本当なんだよ」

言いながら杖を出したり閉ったりするとキルアの訝しげな視線が深まった。
何度か口を開きかけ、閉じる。
その様子はこれ以上踏み込んで聞くか躊躇しているようでもあった。

「・・・信じられない?」

「・・・・・・」

いつものように困ったように笑うのではなく、少し真剣な声を出した。
私の様子が変わったのがキルアに伝わったのか、キルアはこちらを向いてまっすぐに目を合わせた。
しばし二人で見つめあっていたが、どのくらいたったのか本当の時間は分からない。



ばさっばさばさっっ



近くにいた鳥たちが一斉に羽ばたいた。
それに合わせるかのようにキルアが視線を外した。
と思ったら盛大なため息が聞こえてきた。
なんだそのため息、と膨れていたらキルアはすぐにこちらを向いた。
その顔には小生意気そうに口の端をあげ、挑戦的な色を瞳に宿していた。
それでいて発せられたその言葉には少しだけ寂しそうな響きが含まれていた。

「まぁ、仕方ねーか。・・・複雑な事情ってのは俺もあるしな」

先ほどまで神経が過敏になっていたせいか、ぼそっとだけ呟かれたその言葉までしっかりと私の耳には聞こえてしまったが、一瞬だけ目を閉じ心の中に仕舞う。
きっとキルア本人も話すつもりなどないのだろう。
私の意思を尊重してくれたキルアにそんなことを聞くつもりもなかった私は杖をしまい、微笑んだ。
なるべく作りものではない笑顔で。

「ありがとう」

この言葉がどれほどキルアに伝わったかはわからないが、キルアが少し笑ったように見えた。
一瞬だけ見えたその笑顔は皮肉ではなく、優しい他者を思う笑顔だった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ