狩人

□星と月とハンターたちの宴X
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移動しながらキルアとのんびり会話をしていた。

「ゾルディック家?あーあの有名な暗殺一家か」

頭に叩き込んだこの世界の資料を引っ張り出す。
確か山をまるまる所有しているとかで観光名所にもなってるとか書いてあったはず。

「そ。それが俺んち」

なるほど。
それを聞いて合点がいった。
キルアの子ども離れした観察眼と洞察力、そして何よりも場馴れした精神力とこの並はずれた戦闘力は才能だけではなく、特殊な環境下での厳しい訓練と努力の賜物だったわけか。
飛行船の出来事もキルアにとっては日常茶飯事で、でも別に望んでそうなったわけでもない。

「そっか。有名なお家を持つと大変だね」

あまりにも私があっけらかんと、それでいてしみじみつぶやいたのが面白かったのか、キルアが目を丸くした直後に抑えきれないとばかりに噴き出した。
そのあとしばらく笑い続けたので何がそんなに面白いのかと笑われて少々不貞腐れた顔をしながら問えば、飛行船でのゴンとのやり取りを話し始めた。

「そんなにおかしいことかね」

首をかしげながら呟けば、

「ははっ、だってさ、ほんっと、リノもゴンも変わってるよ。普通こんな話をして真面目にそんな反応返すのお前らくらいだよ」

とにべもなく返されてしまった。
全く持って失礼だ。
というか暗殺家業を生業としている家に生まれた君に言われたくはない。
私は頬を膨らませた。
しかし、仲間たちがどう思ってるか考えるとキルアと似たようなことを言いそうなので頭の隅に追いやった。

「やっぱ俺の周りは変な奴らばっかだな」

「ほう。それは私も含んでいるのかね?少年」

「いきなり、なんだよその話し方って・・・うわっ!(リノの目笑ってねえ・・・・)」

「やっぱりって?」

「(あー怖かった・・・)ん?ああ。俺んちにもいるんだよ、変な奴」

そういったキルアの横顔が嬉しそうだったのは気のせいではないだろう。


そして、飛行船の中でゴンと一緒になってネテロ会長とハンターライセンスを賭けてゲームをしたこと、トリックタワーでのゴンの呆れたわがまま発言などキルアは楽しそうに語った。
他愛もない話をしているときは、ただのどこにでもいそうな12歳の少年がそこにいた。
しかし、笑っている時の顔は年相応で無邪気なものであるのにふとした瞬間に見せる影は子どもらしかぬ哀愁を感じる表情だった。
まるで何か許されないことをしているようにも見えた。
そう、それは私があの太陽な笑顔をもつ少年にあった時に感じた言いようのない不安と似ていた。
少し前の自分を思い出し、あのときの私はこんなに無邪気な顔などしていなかったかもしれないなと思った。
常に悲壮な顔をしていたつもりもないが、不安は隠れていなかったのだろう。
いつもどんなときも彼は私と一緒にいることを望んだ。
隣にいることが当たり前のように。
離れると嫌というほどにわかる。
自分が寂しがっていることに。

(・・・もう少しで試験も終わる。そしたら帰るよ、必ずあなたのもとに。二人でね)

いつか二人で見上げたように空を見れば、夕闇が迫っていた。
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