狩人

□星と月とハンターたちの宴
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第1話 プロローグ
ようやく、ここから始まるんだ。
ハンターになって、親父を探しに行くんだ!

「ミトさん、おれ行ってくるね」

まだ日が昇りきらない朝露がこぼれる時間に少年特有の澄んだ高い声が響く。
川岸を流れる風は街へ向かって流れていく。
少しの間に少年以外の声が聞こえてきたが、どうやら震えているようであった。
ひと際優しい風が吹いたとき、その少年の姿は風に乗って旅立ってしまっていた。





***** *****




ハンターとは、怪物・財宝・賞金首・美食・遺跡・幻獣など、稀少な事物を追求することに生涯をかける人々の総称であり、ハンターと名乗るには【ハンター試験】を受験し、合格しなければならない。
ハンターの資格を得るとプロのハンターとされライセンスが支給されるが、数百万分の一の難関と言われる試験を突破しなければならないため、合格者が出ない年もある。
また、合格者よりも死亡した受験生の方が多い年の方が多いのがふつうである。
しかし、そんな厳しい試験であっても受験者が減ることはない。




そして、今年もハンター試験が始まろうとしていた−




地下を埋め尽くす受験者の数。
その空間は異様な雰囲気に包まれていた。
エレベータが動く音がして、唯一のドアが開くと同時に高い少年の声が響いた。

「ここが試験会場なんだね!」

ドアから声と主と思われる男の子が飛び出してきた。
一瞬だけ視線がドア付近に集まった。
少年のあとに続いて金色の髪に碧眼の目を持った青年とひょろりと背が高く眼鏡をした若干疲れた顔をした男の3人が入ってきた。
どうやら3人は知り合いらしくしばらく3人で話していたが、そこに怪しげな男が近づいて行くのが見えた。
どう見ても胡散臭さ満載だったが、何故か3人はその男と話し始めた。
試験も始まらず暇なのでしばらくその様子を観察していたが、根が素直だと思われる少年は男を邪険に扱うことなく男が言う忠告にうなづいていた。
しかし、ふいに男が少年にジュースを差し出し、少年が何のためらいもなく受け取っている様子にぎょっとした。

(何が入ってるか分からないのというのに)

少年のあまりの無防備さに呆然としつつもしかめつらを崩さず傍観していると、少年はおもむろにジュースを口に含んだ。
あっと声をあげかけた瞬間、少年は口に含んだジュースを吐き出した。

「トンパさーん、このジュース腐ってるよ」

「えっ!?そうかな」

「うん。変な味がする」

トンパと呼ばれた男は少年がジュースを吐き出したことに驚きを隠せないでいるようだった。
その後トンパは冷や汗をかきながら少年たちのそばを離れて行った。
どうやらあの男が期待したものは得られなかったらしい。
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