狩人
□星と月とハンターたちの宴[
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第8話 終わりと始まり
マザーコンピューター【MI】を前に、端正な顔を最大限歪めた表情の少女がいた。
目の前にはMIが出した情報が何もない空間に照らし出されている。
それを見つめながら眉間のしわを深くしていく少女に後ろから声をかけるものがいた。
「・・・なんで、そんな不細工な顔してるんだい?」
「うるさい」
少女の肩を抱きながら現れたのは、少年とは言い難い、いや少し大人びた少年であった。しかし、肩を抱かれた少女は視線一つ動かさずに、間髪いれずに肩の手をはじき落とした。
手をはじき落とされた少年は特に気にしたそぶりも見せず、肩をすくめただけであった。
「全く・・・ほら、そんな顔してたらかわいい顔が」
「うるさい」
「最後まで言わせろよ!」
少年の芝居じみた台詞に少女の眉間のしわが一層深く、そして次に発せられた言葉には少々怒気が含まれていた。
「耳障りな気障台詞を聞けと?」
「まぁ、それが俺の存在意義だか」
「うざい。黙れ」
「ひでえ!」
少女の辛辣な言葉に大げさなそぶりで慄いているが、やはり少女はそちらを見ようともせず、モニターを睨んでいた。
モニターに映る内容に顔をしかめているというよりは、少年の言動全てが少女の逆鱗に触れるようであった。
少女を取り巻く空気が不穏な色を出し始めた頃、音もなく部屋に人影が現れた。それを視界の端に捉えた二人は同じ言葉を発した。
「「リノ」」
異口同音に発した言葉に少女は眉をひそめたが、少年の方は少女の様子に気付いてないのかリノの方へと足を進めた。
「早かったじゃないか!それで?ハンターライセンスっていうのは貰ってきたのか?」
少年が楽しそうな台詞とともにうやうやしく手を差し出してきた。エスコートでもしようとしたのだろうか。しかし、その手をまるでなかったかのように華麗にスルーしたリノは二人に向かって坦々と言葉を発した。
「ハンター試験なら辞退してきたよ」
一瞬にして、空気が固まった。リノの言葉にはそれほどの意味があった。そして、その意味を正確に察した二人は別々の反応を示した。
「彼女の居場所が分かったんだな」
「リノ、奴らの尻尾を掴んだの?」
第三者から見たら、二人が今思い浮かべていることが同じだとは思えないだろう。
けれど、家族のように過ごしてきた彼らは、例え優先順位がひとり一人違っても、全ての事柄をつなげて考えることができる。
また、リノが戻ったということならば、やることは一つ。
久しぶりの家族であり仲間たちの察しのよさにリノは笑った。
その目に宿るは燃えるような熱い光。
煌めく熱い光は、戦い前の高揚感。
抑えきれないとばかりにただ告げる。
「さぁ、久しぶりの宴」
その言葉に、隠しきれないさまざまな思いを込めて。
「戦闘準備、開始だ」