鉄血夢 表ver

□血濡れの少女 18
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なんだかこのぬいぐるみみたいなのは難しい言い回しをする。

しかも凄く上から目線だ。

だけどリノのことを心配しているのは分かった。確かリノはずっと一人だって言ってた。一人だった頃のリノを知ってるから心配してるのか。

問われたことについて考える。
仲間としてリノのことは好きだと思う。

まだそんなにリノのことは知らないが、最近笑うようになってきたリノを見てるのは好きだ。
表情がコロコロ変わる。
泣いてると思ったら泣きながら笑ってたり、さっきみたいに神妙な顔してたと思ったら突然笑い出すし。

自分が感情を表に出すのが得意ではない自覚がある。
ユージンとかにもよく言われる。
何考えてるか分かんねーって。

リノは思ってることがすぐに顔に出るから面白い。
最初会ったときは全く動いてなかったのに。本来は感情豊かなんだろう。だけど、

「一人だけ特別っていう好きとは違うと思う」

確かにリノは面白いし見てるのは好きだ。けど、それがリノだからなのかは分からない。

表情がコロコロ変わるっていうならクーデリアもそうだ。難しい顔をしていることの方が多いけれど、たまに見たことないような柔らかい表情で笑う。そういう顔してる時のクーデリアは、可愛いと思う。

≪・・・・ならよい≫

ぬいぐるみが言いたいことは分からないけど、これだけは言える。

「そんなに心配しなくても、リノはもう俺たちの家族だよ」

酒を飲み過ぎて潰れてたオルガが言ってた言葉。ここが俺たちの居場所なんだ。
今よりもっともっと昔の頃の話。いつかその場所に行くんだと誓いあった。その居場所を守るために、今は戦わなければならない。

あ、リノに昭弘の弟がいるって言い忘れたな。まぁ後でもいいか。俺もオルガの所に行かないと。そんなことを考えつつ、部屋を後にした。保護者がいるならリノ無茶をしないだろう。

目が覚めたら目の前に今度はクーデリアの顔があった。なんか皆近いよね。

「お、はよう」

「おはようございます。あの、大丈夫ですか?」

クーデリアが心配そうに聞いてくる。寝すぎたせいで若干体が痛い気がするけど、もう大丈夫だ。
ルドラを見れば、こくんと頷いたのが見えた。精気も十分に回復したと言うことだろう。

「うん。大丈夫。心配してくれありがとう」

「いえ、そんなことは・・・私に出来ることはこれくらいしか、ないので」

そういったクーデリアの声は無力感を嘆いているかのようだった。
そうだよね。
私たちは最前線で戦ってるからあんまり気にしたことなかったけど、待ってるだけなのも辛いよね。

よしよしとクーデリアの頭をなでる。驚いた表情でこちらを見るクーデリアの表情がちょっと可愛かった。

「三日月からお見舞いに来てくれてたって聞いたよ」

「それは、はい」

「私ね、クーデリアがいるから頑張れる。クーデリアが待っててくれる、心配しててくれるって知ってるから」

「!」

「一人じゃないのがすごく嬉しい。だから笑って?クーデリアの笑った顔みたらもっと元気になれるから」

「・・・本当に、リノは・・・これでは私が慰められているではありませんか」

「へへー実は言ってみたかったんだこうゆうの。待ってくれる人がいたらどうなんだろうって想像したりして、心配させるかなとか考えてた。そしたらなんて返せばいいかなとかさ・・・家族が出来たら、きっと言えるかなって思ってた」

「リノ・・・!そうですね、私たちはもう他人ではありません。だから」

クーデリアはそこで一度言葉を切った。そして、

「おかえりなさい、リノ。無事で本当に良かった・・・・」

「!うん、ただいま」

クーデリアは笑顔でそう言ってくれた。前にあったむずがゆい感じはなくなったけど、代わりに胸のあたりがとても暖かった。暫し二人で笑い合ってたけど、アトラちゃんが部屋まで来たので起きることにした。

「リノさん!良かった、元気になったんですね!」

「うん。アトラちゃんもありがとう。あ、お弁当美味しかったよ!」

「あ、はい!なら良かった・・・私リノさんのご飯好きだから、早く追いつけるようにしようって頑張ったんです!」

内緒ですよと照れるアトラちゃんが可愛かった。でもそんなに料理上手くないよ、私。そこは買い被りな気がする。

「そんなことないよ、アトラちゃんのご飯おいしかったよ!」

「いえ、まだまだです!私、香辛料とかあんまり使ったことないので、少しずつ慣れて行こうかなって」

あーなるほど。鉄華団の炊事場にあったのって私が奥から掘り起こしてきたんだっけ。あんまり火星では馴染みがなさそうだもんね。まぁその辺は慣れるしかないね。使わないと分からないこと多いし。

「でも三日月は私が作るとおいしいって言わないよ?」

あいつ私が作った料理は全部当ててくるもんな。「これリノが作ったでしょ?変な感じするし」ってわざわざ言いにくる。最初は何のいじめかと思った。

「え、そうですか?」

「そう言えば、たまに渋い顔して食べてらっしゃいますね」

渋いっておい!
そんなに嫌か!
でも、アトラちゃんの料理はおいしいって言ってたよな?何が違うって言うんだよ。ん?アトラちゃんは香辛料使うの慣れてない。私が来てから香辛料使うようになったってことはだよ。私は気付いてしまった。あの時の三日月とのやり取りの真相に。

「三日月、香辛料好きじゃないんだ」

「え、ええ!?」

「もしくは単に私が作ったのがあいつに合わないか」

「そこは人の好みによりますからね」

後者の理由は地味に私が傷つくけどね。
さすがにないと思いたい。しかし、女の子3人集まってする話が主に三日月ってどういうことだ。あ、私のせいか。すまん。

「まぁそういうことだから、ゆっくりと慣れて行けばいいと思うよ?」

「そうですね!」

アトラちゃんの笑顔に癒される。
ここんとこ三日月を占領しててほんとごめんて感じする。そこは若干仕方ない部分あるけど。MS整備とか戦闘になると私たちに仕事が回ってくるし。
私もしたくてしてるわけじゃないしな。
うん。
おやっさんと話してたことは忘れよう。どうせ三日月も忘れてるし。

「そうだ。海賊が喧嘩吹っ掛けてきたって言ってたけど、その後どうすることにしたの?」

「あ、そうです!私、それでクーデリアさんを呼びに来たんです。一緒にお弁当作ろうと思って」

「お弁当?どうゆうこと?」

私が寝ている間に色々と作戦が決まったらしい。
ブルワーズのヒューマンデブリに昭弘の弟である昌広がいるらしい。その弟のこともあり、ブルワーズの喧嘩を買うことにしたそうだ。その為の作戦として、三日月とラフタがデブリ帯を先行することになった。
長距離を動くことになるので、そのお弁当を用意すると言うわけだ。

「リノさんももし動けるなら一緒に作りませんか?」

「あーごめん。私オルガのとこ行かないと・・・さすがに寝すぎて心配かけたし。二人にお願いするね」

「動けますか?もし、大変なら私が付き添いますが・・・」

「大丈夫だよ」

逆に寝ずぎて体が硬い気がする。少しは動かないとね。さて、働きますか!
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