暗殺日記

□6日目
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昨日の手の怪我で、運動に制限がされてしまった。
せっかく遅れを取り戻そうとしたのに、これでは意味がない。
これはこれと諦め、少しでも役立てるように、変えてもらった射撃練習に打ち込むことにした。

が、何だか上手くいかない。
いつもなら的に当てられていた距離でも、あまり当たらない。
10日ほど前の練習では、ちゃんと出来ていたはずだ。


「ホントだ···確か鈴音って、射撃得意だったよね。」

「速水さんほどではないけど、どっちかと言えば得意かも···?」

「うーん···なら多分、スランプかな。」

「うぅ···この時期にスランプとは···!」


さっき私が打った的を見ては、二人で言う。
中心には全く当たらず、その周りに数発だけ跡が残っている。
授業の練習で気になったので、無理を言って放課後に速水さんに見てもらうことにした。


「どうすれば良いかなー。」

「気にしすぎると、どんどん悪化するんじゃない?精神状態も関わるだろうし。」

「と言っても、この結果じゃ気にするよー···。」

「まぁ、そっか···。」


私がそう言って肩を落とすと、速水さんはなだめる様に撫でてくれた。
今日はどうやら、デレのようである。
スランプだからといって、諦めるのもなんだか癪だ。
やはり、練習をして治そうか。


「練習も大切だけど、むやみにしても意味が無いって聞くよ。」

「そうなの?速水さんに相談しておいてよかったー。じゃないと無意味なことしてたよ···。」

「それより、スランプの打破優先じゃない?」

「じゃあ、そうしよっかな···。」

「そもそも、今までスランプしなかった方が不思議だわ。」


それは多分、スランプするほど真面目に練習してなかったからだと思う。
それは言えないので、適当に言葉を濁して誤魔化した。
今までしたことがないから、少し焦り不安を感じる。
怪我して動けないから射撃練習をしているのに、これも出来ないとのると、やれることがなくなってしまう。
手の怪我は言い訳にできないし、何としても調子を戻さなければ。


「時間も迫ってるし、焦る気持ちもわかるけど···今まで通り、鈴音のやり方でいいんじゃない?」

「私のやり方?」

「最近になって、何か急いでる気がするんだよね。一気に詰め込んだって、得るものも得ないよ。」

「な、何か、速水さんがたくましく見える!」

「いや、何それ···。」


確かに今になってみんなに追いつこうとしているけど、それが裏目に出てるということだろうか。
それにしても、速水さんはよく周りを見ているんだと思った。
今までクラスでひっそりとしていた人が、やたら動き回って目立ったのかもしれないが。
今回のスランプも、それが原因なのかもしれない。

速水さんは自分の銃を出すと、的に向けて射撃する。
私が撃ったのとは違い、速水さんが撃った弾は的の中心に当たった。


「わっ、すごい・・・。」

「銃の持ち方も、トリガーの引き方も問題ないし、一時的なものでしょ。それより、気分転換でもしたら?」

「気分転換、か···。」


私も自分の銃を持ち直し、的に目掛けて一発撃ってみた。
さっきよりは、幾分真ん中に近くなった。


「···よし、じゃあ気分転換に買い食いだ。速水さんも行こ。」

「わ、私も?」

「うん。少しなら奢るよー。」


付き合ってもらった礼、それと気分転換に放課後に友達と遊びに行くために誘ってみた。
ダメ元で誘ってみたけど、特に用事もないようなので一緒に行ってくれるらしい。
暗殺もスランプも、E組というのも忘れて、放課後は楽しむことにした。





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