暗殺日記

□8日目
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帰りの道中、山を下りている途中でスマホがバイブした。
カバンから出してみると、律が画面の向こうからこちらに声をかけている。


「鈴音さん。お昼休みの時に届いたメール、未読ですよ。」

「人のフォルダを漁らないでよ···。誰から?」

「ブランシュ、というカフェからのメルマガですね。メール会員限定のクーポンが付いてますよ。」

「本当?何のクーポン?」

「注文時に提示すると、ジェラートがサービスで付いてきます。」

「よし、行こう!」


お気に入りのカフェからのメルマガを見逃していたとは、何たる不覚。
律のおかげで見逃すことなく、サービスに頼ることができた。
さすがにスマホに向かって話していると不審がられるので、イヤホンを差して通話しているフリをする。
画面さえ見られなければ、多分不審なところはないはずだ。


「ブランシュには4時30分に予約を入れてあります。それまで隣の書店で、欲しいと言っていた数学の参考書を探してみては?」

「しっかりプラン立ててる···出来た子だ···。」

「皆様のお役に立てれるのなら、本望です!」

「立ちすぎて、逆に恐ろしいくらいかな。」


律だからプライバシーを漏らすことはないだろうが、現代社会において、もしもの時厄介すぎる。
データの流出が心配になる。
とりあえず疑うのはやめて、そのまま律と会話をしながらカフェに向かう。

まだ時間があったので、律の言う通り隣の書店で参考書を見てみた。
律に調べてもらって、私のレベルにあった参考書をいくつか上げてもらった。
けれど、最終的に殺せんせーや律に教えてもらった方が、分かり易いし安上がり、と言う結論に至った。
セコイかもしれないが、この後の買い食いを考えればお金はとっておきたい。


「鈴音さん、もうそろそろ時間ですよ。」

「あ、ホントだ。行こっか。」

「はい!楽しみですね!」


時間になり、隣のカフェに移動する。
疑っていなかったが、本当に律の予約ですぐに入れたのは驚いた。
ケーキとドリンクのセット、そしてサービスのジェラートを注文し、その味を堪能する。


「この店には、たまに殺せんせーも来店しているんですよ。なんでも、ガトーショコラがお気に入りだとか。」

「ここのケーキ美味しいし、気持ちも分かるけど···さすが甘いもの好きだね。」

「ちなみに、本日のメールを見てこの店に来る確率は78%です。」

「確率高っ!」


私もメール見た瞬間に来てしまったが、殺せんせーも簡単につられるのだろうか。
というか、メール会員なのにも驚くし、その確率は一体何から出されているのだろう。


「普段の殺せんせーの行動パターンを分析し、その傾向から導き出してます。」

「へー···律にしか出来ない技かー。」

「よろしければ、逃亡パターンをお教えしましょうか?学校、裏山、街中など、様々な場面を揃えてますよ。」

「あ、それ知りたいかも。」

「ではまず、校内での逃亡パターンから。教室での一斉射撃の場合···」


ジェラートを食べながら、動画と共に流れる律の説明を受ける。
覚えても先生のスピードについていけるかは分からないが、覚えておいて損はないはず。

その講習を受けて約10分後、律の計算通り殺せんせーが来店したのは別の話。
しかも案の定、絡まれてしまった。





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