暗殺日記

□9日目
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お弁当を食べ終えて、各々有意義に過ごす昼休みだが、私は対先生用のナイフを片手に校舎裏に向かう。
別に暗殺に向かったわけではなく、少し素振りでもして体を動かしたいだけだ。
最近大きな動きが出来なかったし、昼休みの短い時間でも練習の出来るものを選んだ。
誰かに見られるのも、何となく小恥ずかしいので校舎裏でやる。

数分後、私の思いを反するように人の気配がした。
グラウンドで遊ぶ人もいるが、わざわざ校舎裏に来る人はいない。
反射的にナイフを隠した。


「あれ、誰かいると思ったら···何してんの?」

「カルマ君か、びっくりした···。まぁ、ちょっとね。カルマ君こそ、何しにきたの?」

「別に?飯食ったら、眠くなったからさ。」

「サボる場所、探してるんだね···。」

「でもここはダメか。鈴音に見付かっちゃったし。」


ケラケラと笑いながら答え、否定をしない素行不良者。
確か5時限目は、数学だったはずだ。
得意教科だからって、サボるのは感心しない。


「それじゃあ、このまま教室に戻ろうか。放っておいたら、サボりそうだし。」

「ちぇっ、鈴音に見つかったのが、運の尽きかー···でも、もう戻っていいの?」

「え?」

「暗殺目的以外にナイフ持ち歩くなんて、理由があるんじゃないかなぁって。」

「あ、あれ···?!」


カルマ君はいつの間にか、私が隠したはずのナイフを片手に持っていた。
口ぶりからして、私のしていた事に気付いてるようだ。
隠していたものを見つけられると焦るもので、体に熱が集まるのがよくわかった。
私が言葉にならない言葉で濁そうとすると、カルマ君は笑いながらナイフを私に返してくれた。


「サボるのを黙ってくれるなら、俺も黙っててあげるよ。」

「素直に首を縦に振れないんだけど···。」

「言うと思った。あのタコもうるさそうだし、出るだけ出ようかな。」

「居眠りする気、満々だよね。」

「うん、もちろん。」


詫びる雰囲気もなく、さきほどから笑顔を崩さずに言っている。
しかし幸か不幸か、隣の席が私なので、寝ていたら起こさせてもらう。


「鈴音もお節介だねー···じゃあ、眠気覚しに付き合ってよ。」

「眠気覚しって···何するの?」

「鈴音がそれで俺に攻撃、で、俺はそれを避ける。練習にもなるし、一石二鳥だと思わない?」


それ、と言いながら指を指したのは、私の持っていたナイフだった。
確かに人間に害はないが、沖縄で見たカルマ君の防御テクでは、私のナイフが当たることなんて、ほぼない。
そもそも眠気覚しになるほど、相手になれるかすら不安を感じる。
そう思っていたが、言いくるめられてしまい、カルマ君に向けてナイフを振ることになった。
ちなみに着替えていないのでスカートだったが、下にスパッツを履いているので思い切り動ける。

最近では烏間先生にナイフを当てられる回数も増えたが、かすらせるのが限界。
烏間先生よりも惜しいところまでは行けるが、見事に弾かれる。
それでも意地でくらいつき、肩を目掛けて突きをしようとしたら、避けられ腕を掴まれた。


「はい、ゲームオーバー。」

「うぅ···全然当たらなかった···。」

「俺の勝ちってことで、今度飲み物でも奢ってよ。」

「賭けしてたの?!まぁそのくらいなら良いけど···。」

「マジ?やった。」


カルマ君の言い出したことだが、付き合ってもらったことには変わりない。
その礼も兼ねて、飲み物くらい奢ってもいい。
昼休みももうすぐ終わる時間になったので、カルマ君を連れて教室に戻った。
授業中、カルマ君が居眠りをしていたのは言うまでもない。





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