暗殺日記

□12日目
1ページ/1ページ



午後の授業が眠くなることは、少なくないだろう。
しかも数学の授業。
プリントを配られて、それを各自解くように殺せんせーが時間をとってくれたが、その時間はどうも眠くなる。
現に私も眠いし、隣の席のカルマ君は既に寝ている。
机の上を少し見てみると、問題は全て解き終えていた。

このまま分からない問題を考えていたら寝てしまいそうだ。
そこをカルマ君に教えてもらいたいところだが、起こしたところで結果が目に見えている。
おそらく教えてもらえるだろうが、終わっていると言ってカルマ君は二度寝するだろう。
カルマ君は諦めて、他の人に助けを求めるにした。


「千葉君、千葉君。ちょっとお助けを。」

「鈴音?なんだ?」

「問4の3の解き方を教えてほしいんだけど···。」

「あぁ、別にいいよ。」


そう言って千葉君は椅子を動かして、こちらの方を向いた。
その際に、後ろの席のカルマ君を見て、何か納得したような表情をしていた。

一応途中まで解けていたので、その続きのやり方を教えてもらう。
今まで千葉君に教えてもらった事がなかったので知らなかったが、とても教え方がうまくて理解しやすかった。


「そうしたら、それぞれの公式に当てはめてれば、sinθとcosθが求められる。」

「あ、なるほど、こうやるんだ。ありがとう。」

「ところで···カルマは起こさなくていいのか?」

「この会話してる横で寝続けてる辺りから、爆睡か起きる気ないのどちらかだから、放っておくを選ぶ。」

「···鈴音も良く観察してるな、お疲れ様。」

「ありがとう。隣だからね。」


隣の私は世話を任されることが多いが、この素行不良の前にいる千葉君にも別の苦労があるだろう。
互いに察し合い、痛みを分けあうとする。
あまり言うと、カルマ君からの襲撃がくる可能性もあるので、分け合いはひとまず置いておき、数学のプリントに視線を戻す。


「で、さっきの問題、sinθ=-1/√1+a²、cosθ=-a/√1+a²になったんだけど、あってる?」

「俺もそうなったけど、あってるかまでは···。」

「千葉君と同じ答えなら、あってるようなものだから、大丈夫だよ。」

「いや、なんでそうなるんだ?」

「役得かな?千葉君、数学出来るし、というか成績良いし。」


あまり前に出ないタイプだから触れられないのか、千葉君は成績は良い。
私も普段は、いろいろな人に教えてもらっているので、正直に言えばさっきまでそれを忘れていた。
それに射撃成績も群を抜いているし、危険性のない仕事人。

気になるところといえば、目を隠すように伸ばされた前髪だが、照準機代わりにしているのはホントだろうか。
私も千葉君の素顔が気になる一人だが、以前スルーされたのを思い出す。
大人しくて、対応の仕方など何だか大人びてる。


「···何気にハイスペックだよね。」

「唐突にどうした···。」

「ついでに今度、遠距離射撃も教えてもらっていいですか?」

「そりゃいいけど、話が繋がってないぞ。」

「そこは気にしない、気にしない。」


そんなことを話していたら、殺せんせーに問題を解くように注意された。
私が顔の前で手を合わせ、仕草で謝罪をすると、それが伝わったのか千葉君はこちらに手を振ってくれた。

その後の光景はと言うと、殺せんせーが寝ているカルマ君を起こそうとしたタイミングで、寝起きとは思えないスピードでナイフで切りかかった。
私だけでなく、近くの席の奥田さんたちも驚き、午後のまどろみは消え去った。
私と千葉君は顔を見合わせ、苦笑を浮かべた。





.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ