暗殺日記

□18日目
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拝啓、清々しき晴天が広がる青空の元、過ごしやすい日が続いております。
最愛なる我が母も、良き日をお過ごしの事でしょう。

さて、そんな麗らかな日に、私は出かける事にし、街を歩いています。
こころなしか、すれ違う人々の足取りも軽やかに見えます。
改めて、こんな素晴らしい日を母と過ごせないとは、残念に思います。
何を言いたいのかと申しますと···


「出かけるなら、食事くらい用意しておいてよ!!」


たまの休日、お母さんも気ままに出かけるのは大いに良いと思う。
けれど昼食の準備、せめて食材くらい用意して欲しいものだ。
昼時になり、お腹が空いたので冷蔵庫を開けてみれば、見事に何も入っていない。
仕方なく街へ出て食材を買うか、または外食をするか、というところで彷徨いている。

外食となると、私一人分だからそんなにお金はかからないが、正直痛い出費だ。
食事代は後でお母さんにもらうとして、安く済ませられる店はないか、と歩き回る。
ふと、見覚えのある店を見つけてしまい、自然と入店をした。


「こんにちはー。1名でお願いします。」

「いらっしゃー···鈴音?!何しに来た?!」

「何って食事?あ、イトナ君も来てるんだ。」

「鈴音も金無しで、わざわざ不味いラーメンを食いに来たのか?」

「うるせぇ!文句あんなら食うな!」


村松君の実家が経営しているラーメン屋、松来軒を見つけたので、試しに入ってみる。
実は前々から行ってみたいと思っていた。
イトナ君は先に来店してラーメンを食べていたようだが、開口一番のセリフは地味に胸に刺さる。
確かにお金はない。


「で?何か食ってくのか?冷やかしなら帰れ。」

「んー···じゃあ、炒飯で。」

「はいよ、ちょっと待ってろ。」


注文すると、奥で村松君が作り始める。
御両親やバイトの人か、何人か人がいるようだが作ってくれるのは、なんだか嬉しい。
イトナ君と隣が空いていたので、そこに座って料理を待つ。
貶すわりには、黙々と食べられているラーメンに、少し興味が出る。


「イトナ君、ラーメン一口頂戴。」

「不味いぞ?」

「···あ、何とも言えない味。」

「テメー等、追い出されてぇのか。ほら、出来たからさっさと食って帰れ。」

「接客態度が悪いよー。いただきまーす。」


村松君の態度はいつもの事なので、気にせずに料理に目を向ける。
運ばれた炒飯からは、良い香りがして私の空腹を煽ってくる。
さっきのラーメンの味は忘れて、躊躇う事なく炒飯を口に運ぶ。


「んっ、美味しい!」

「まーな。親父のレシピを無視して作ってみたからよ。」

「···それっていいの?利益的な問題もあるし···。」

「本来は良くねぇけど、テキトーに言っときゃ何とかなる。殺せんせーに節約術も教えてもらったしな。」

「さ、さすが···。」


万年金欠の殺せんせーの節約術も気になるがそれは置いといて、食事を進める。


「でもこれ、ホントに美味しいね。村松君がこんなに料理が上手いとは···。」

「親父の作るヤツの味が味だからな。殺せんせーにアドバイスもらいながら、色々策を練ってんだよ。」

「こういうところにまで手を出す先生が···相変わらず、殺しにくい先生···。」

「キシシ、言えてるぜ。」


その後は雑談をして、メニューの試作品をもらったり、村松君のお母さんに友達だから、と安くしてもらったり、楽しく過ごさせてもらった。
村松君と話す事はあまりないが、この日はわりと多く話したかもしれない。





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