暗殺日記
□19日目
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今日の体育はナイフ術。
二人一組になり、一人がナイフで襲い、もう一人がそれを避ける。
対先生ナイフならば私達に害はないので、もちろんそれを使っての練習だ。
相手に三回当てられれば交代、顔は狙わない事がルールだ。
今まで体慣らしなどでした事はあるが、授業のメインとしてやるのは珍しい。
訓練を受けてきた私達になら、同級生のナイフくらいなら避けられるし、自分が攻撃をされる事で、標的がどの様に避けるかが予測しやすくなる、と烏間先生は言う。
ペアの相手は、普段の授業の様子から実績が同じくらいの人を、先生が組んでくれた。
そして私のペアは神崎さんだ。
今は神崎さんが私に襲い、私がそれを避けている。
ちなみに、既に一回当たっている。
「おっと、危なっ!」
「ふふっ···烏間先生も、新しい授業の仕方を思いつくね。」
「表情と行動があってない!おしとやかな笑みで人襲ってるよ、この人!」
普段と変わらない笑顔で、神崎さんは私に突きをしてくるが、突っ込みを入れつつ、体を捻ってなんとか避ける。
何と言うか、逆に怖い。
「まぁ確かに面白いかも。いつも襲う側で、標的にはならないし。」
「色々な立場に立つ事で視野を広げるのは、スキルを高めるのに役立つもの。」
「でも、殺せんせーと私達の避け方って、同じと思っていいのかなぁ。」
「殺せんせーなら途中で、飛んで逃げそうだもんね。」
「言えてるー。」
身体能力の差は誰しも理解しているが、私達はスキルを高めて悪い事はない。
烏間先生も私達の安全に考慮しつつ、技術を上げる訓練を色々考えているのだろう。
そう考えると、殺せんせー並に手厚い先生だ。
「E組は本当に、良い先生に恵まれたクラスで···毎日がとっても楽しいな。」
「本校舎の生徒には、絶対に言えないけどね···でも、同感かなって、わわっ!」
「やったぁ、これで二回目···!」
勿論、話しつつも私達は授業をしているわけで、その会話で生まれた一瞬の隙を突かれた。
明らかに外れていた突き、かと思えば、神崎さんは横にナイフを降って、私の体に見事に当てた。
避けられなくはない斬撃だったが、会話で油断していた私には避けられず。
「···もしかして、ワザと話をふったんじゃ···。」
「フフっ、何の事かな?」
「くっ···!まんまと策に溺れただと···!?」
「実績で組んだペアだけど、鈴音さんは頑張ってるから···こうでもしないと、当てられないと思って。」
こんな単純な事に引っかかるとは、我ながら情けない。
とは思うも、それよりも私の性格を理解して、作戦に乗らせるように、自然な流れで誘導した神崎さんがすごい。
標的の事を理解するのも、暗殺成功に繋げられるのだと改めて思った。
「あと一回···今度は油断しないからね。」
「なら実力勝負、かな。私も精一杯やらしてもらうわ。」
神崎さんは真面目なので、今までの授業で基礎はできていたので、粘り強く食らいついて、私に一撃を当てられた。
何とも神崎さんらしい、そんな殺り方だった。
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