暗殺日記

□20日目
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「鈴音。アンタ確か、ソーイングセット持ってたわよね?」

「持ってるよ。どうしたの?」

「ちょっと貸して欲しいのよ···ちょっと、ね。」

「その笑みと共に言われても、ちょっとで済む気がしないんだけど···。」


珍しく狭間さんに頼まれ事かと思いきや、独特のニヒルの笑と共に答えられる。
少し気になるが、ソーイングセットを使うのならば、服を繕うくらいにしか使えないはずだし、疑うのも良くない。
通学用の鞄からソーイングセットを取り出し、狭間さんに渡す。


「制服でも解れたの?どこも解れてないように見えるけど···。」

「···ソーイングセットの使い道は、裁縫だけじゃないのよ。」

「何に使うの?!それ私のだよ?!」


食い気味に言うと、静かにしてとなだめられた。
とはいえ、私のソーイングセットが何に使われるのか気になるので問い質せば、教室の外へと連れ出された。
そのまま狭間さんについて行くと、教材置き場に使われている空き教室に付いた。


「ここで何するの?」

「これよ、これ。」

「···あの、いったい何ですか?これは。」


教材を入れるための棚、というよりも、ほぼ物置になっている棚から、狭間さんが出してきたのは妙な道具一式。
変な模様の書かれた紙や蝋燭、見るからに怪しい本など、これはどう見ても呪術。


「···私のソーイングセットの用途は?」

「丁度いい針がなくてね···これならバッチリよ。」

「それ、あげるよ。安物だし、今後使いにくくて仕方ない。」

「あら、じゃあ遠慮なく。」


狭間さんは満足そうに笑うと、棚の奥から、さらに殺せんせーを型どった人形らしきものを取り出した。
どうやら、このまま呪うつもりだ。
そんな呪いに使われたソーイングセットなんて、今後使いにくいというか、使ってる私も呪われそうな気がする。
貸す側の権限として何となく、その様子を眺めさせてもらったが、本当に呪いが効きそうな気がする。


「···狭間さん。なんか手馴れてない?」

「そう感じるなら、そうなんじゃない?特に深くは言わないわ。」

「なにそれ、余計に怖い!!」

「世の中はね、知らない方がいいこともあるのよ···。」


何だかすごく説得力がある気がした。
あまり勝手なイメージは持ちたくないが、狭間さんの場合、そのイメージはもしかしたら合っているかもしれないのが、また難儀。
いくら殺せんせーだからと言って、呪いは如何なものか。
人を呪わば穴二つ、とも言う。


「その時はそれでもいいわ。私の呪いに信憑性が出るじゃない。」

「狭間さんのメンタル、逞し過ぎませんか。」

「このくらいの覚悟がなきゃ、やすやすと呪いなんてできないわよ。」


言ってる事がごもっともだ。
その覚悟のある狭間さんもどうかとも思う。


「あの先生はメンタル面が弱いからね。この後、このセットを教卓にでも乗せておけば、効果はあると思うわ。」

「それって呪いの効果じゃないよね。わかる気がするけど。」

「テンパると動きが鈍るし、その瞬間を狙えばいいのよ。」

「あ、そっか···。涙ならがらに犯人を探す先生しか、想像出来ないや···。」

「そうなったら、してやったりね。」


そして狭間さんは、また満足そうに笑う。
この独特な雰囲気が少し気になる反面、苦手だったが少し面白く感じてしまった。
これは共犯になったからだろうか。





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