暗殺日記

□24日目
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いかがわしい本を片手に硬直する私。
勘違いして欲しくないが、これはもちろん私なものではない。

体育の授業終了後、使った道具を片付けるために用具室へ私はここに来た。
道具を置き、さて教室に戻ろうと振り返った瞬間、近くに置いてあった箱につまづき転倒。
転んで痛いし、箱の中身は散乱するしで慌てた私は、片付けようと落ちたものを手に取る。
そしてそれが、冒頭のいかがわしい本。

犯人の心当たりはあるし、というかこの系統の本は三人の誰かしか有り得ない。
今更だし深く関わりたくないので、見なかった事にして本を片付けようとした。
が、その瞬間用具室に声が響いた。


「あ!それは俺の極秘のエロ本!」

「やっぱりアンタのかー!!」

「待っ、何すんだ!」


本を持っていたのを見られて恥ずかしいやら、犯人の登場やらで、混乱して本を犯人である岡島君に投げつけた。
岡島君は驚きつつも、落とさないようにしっかりとキャッチした。
そもそも、何でここにいるのだろう。


「いや、新しい本を納品しに···てか、投げるなよ!俺の魂だぞ?!」

「そんな魂、捨てていいよ!てか、こんなところにそんなもの置かないでよ!」

「ちょっと待て、鈴音!···否定する前に、俺の話を聞け。」


できればすごく聞きたくないのが本音だ。
早いところ、この用具室から脱出をしたい。
が、先にここに入ったのは私で、後から来た岡島君が出入口に近いのは必然。
逃げようにも、私の目の前で見事に邪魔をしている。

私の意思に反して、岡島君は語り始めた。
しかも何気に決め顔なのが、地味に腹が立つ。


「いいか?このエロ本は暗殺に使う、大切な小道具なんだ···こんなにも先生の好みに合った本なんて、今後見つかるかどうか···!」

「ふ、ふーん···。」

「いつでも使えるように、学校内に置いといたんだよ。外に置いとくわけにも行かないだろ?」

「···まぁ、本だもんね。」

「そういう事だ!納得したか?!」


確かに納得はしたのだが、本が本なので頷けない。
殺せんせーにエロのトラップは効果抜群であり、その仕入れ先は大概岡島君だ。
まさか、こういうところに隠していたとは、予想外過ぎた。
せめてカバンとか机とか、自分の範囲内に隠して欲しいものだ。


「そんなところに隠したら、使う前に先生にバレるだろ。ここなら対先生物質も置いてあるし、殺せんせーも滅多に近付かないからな。」

「本の内容がこんなのじゃなければ、少しは尊敬できたかもなぁ···。」

「鈴音は分かんねぇかなぁ・・・この良さが!」


そう言うと、岡島君は持っていた本を開き読み始める。
私には分からなくても一生後悔しないだろうし、というか分かりたくもない。
出来ればここで読むのもやめて欲しい。


「鈴音、道具片付けるのにどんだけ時間が···何やってんだ。」

「あ、聞いてくれよ、千葉!鈴音のヤツ、これの良さが分からないんだぞ?!」

「···悪いが、俺にも分からない。殺せんせーやイトナと話してくれ。」

「何だと?!お前、それでも男か!」


いいタイミングで千葉君がやってきてくれた。
可哀想に来てそうそう絡まれ、よく見てみろ、と無理矢理本を見せつけられている。
しかしこれはチャンスと思い、すぐさま千葉君の元へ。
戸締りを岡島君に押し付けて、千葉君の背中を押してその場を後にする。

道具を置きにいくだけのわりには、時間がかかった私を気になって、たまたまパシられて来たのが千葉君らしい。
見事に岡島君をかわせたので、その偶然に感謝する。

しばらく用具室には近付きたくないな、と思った。





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