暗殺日記

□25日目
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本日は休日。
今日はお母さんに頼まれて、買い物へ出かけている。
予定もなかった上、家に引きこもるのもなんだったので快くOKをだして出陣した。
荷物も増えるだろうし、少し遠出にもなるので、普段はあまり使わない自転車で出掛けた。

帰り道、思ったよりも時間がかかってしまい、すっかり日も傾いた。
急いで帰ろうと自転車を漕ごうと思ったら、先程までと違う感覚。
降りて確認してみると、後輪がパンクしていた。
ついてないな、と思いつつ、帰りが遅くなるとお母さんにメールをして、自転車を押して帰っていた。


「鈴音?買い物か?」

「あれ、吉田君。奇遇だねー。見ての通り、買い物だよ。」

「そうか···ん?お前のチャリ、パンクしてんのか?」

「うん。さっき気付いたらパンクしてて。」

「へー···。」


そう短く返事を返したと思えば、傍まで来て自転車を見ている。
そういえば、吉田君はバイクには詳しいと聞いたが、自転車も分かるのだろうか。
というか、見て分かるものなのだろうか。


「なんなら、ウチで修理してやろうか?ここからすぐだし。」

「え、いいの?良ければお願いしたいけど···。」

「俺が言ったんだから、良いんだよ。行くぞ。」


先行く吉田君の後ろを、急いで付いていく。
ここは厚意に甘えて、修理してもらう事にした。

そして着いた吉田モーターズ。
以前イトナ君の一件で来た事はあるが、私には無縁な場所だったので、また来る事になるとは思わなかった。
どこが壊れてどう修理するか、など詳しい話はよく分からないが、一通りの説明を受けて修理をしてもらっている。
その間、私は中に置いてあるバイクを見学させてもらった。
しかしやっぱり、私には分からない。

日も落ちて暗くなり始めた頃、修理が終わったらしく吉田君が私を呼びに来た。


「鈴音。パンクの方は、ばっちり直しといたぜ。」

「ありがとー、修理代いくら?」

「いいって、俺が勝手にやった事だし。つーか俺は従業員じゃねぇし、金取れねぇんだよ。」

「そういうのもなの?なんか悪いな···。」

「だから、いいんだよ。遅くなっちまったし、送ってやるよ。」

「いやいや、悪いよ!何から何まで!」

「何かあったら、俺が気分悪いだろーが。たしか、あっちだったよな?」


そう言いながら吉田君は、修理中は邪魔になるので下ろしていた買い物袋をカゴに詰め、自転車を押して店を出る。
慌てて追いかけ、再度断って見たが聞き入れてはもらえなかった。

村松君や寺坂君もだが、我がクラスでも不良と言われてたこの三人は、思ってたよりも温厚な気がする。
狭間さんは、三人と比べて不良とは違うし、イメージ通りといえば通りなので置いておく。


「···なんか、イメージと違うっていうか、不良ぶってるって感じだよね。」

「はぁ?なんだよ急に···別に、ぶってねぇよ。」

「またまたー。本当に悪い人なら、わざわざ修理してくれたり、送ってくれたりしないよ。」


私がそう言うと、吉田君は詰まったように返事はせず、誤魔化そうと視線をそらした。
否定しきれないらしく、しばらく唸るように言葉を発していた。


「···まぁあのタコがいると、どーも調子狂うんだよな。俺らも普通にはしゃいでるっつーか···。」

「不良キャラを忘れるほど、楽しんでるんだねー。分かるよー。」

「なっ···!だから違ぇって!」

「暗殺もあるけど、私達だって中学生なんだし、たまにはいいんじゃない?はしゃぐのも。」


そう言うと、ばつが悪そうに吉田君は照れたような表情をしていた。
私達は暗殺者だが、それ以前に中学生だ。
たまには、自分の趣味や得意な事を見せる、こんな学生の一面を出すのもいいと思う。





(Special Thanks さくら様)

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