暗殺日記

□?日目
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殺せんせーは今、校庭でみんなで暗殺を交えつつ遊んでいる。
つまり、職員室には殺せんせーはいない。
今のうちに職員室へ行き、殺せんせーが戻ってくる前に要件を済ませたい。


「烏間先生、ちょっといいですか?」

「あぁ、どうした?」

「今度の暗殺で火薬を使いたいんですけど、検討してくれませんか?これ、簡単にまとめた計画案です。」

「分かった、見させてもらおう。」


本人を目の前に、暗殺の計画なんて建てられない。
今がチャンス、と竹林君がまとめた図解や、千葉君が書いた設計図などを渡す。
それを一枚一枚目を通す烏間先生の横で、私は待機。
なんだか妙に緊張する。


「これを読む限り、使用する火薬が少量で済むが、少し危険性がある。この箇所の再構成をするよう、みんなにも伝えてくれ。」

「んー···結構いい案だと思ったんですがねー···。」

「この計画自体はよく出来てるが、成功を優先して、君達を危険に曝すワケにはいかない。」


相変わらず生徒の事を考えてくれる、カッコイイ先生だ。
だからみんなにも慕われるんだなぁ、なんて思っていたら、ついジッと見ていたようだ。
烏間先生が不思議そうな顔をしている。


「何でもないです、すみません。」

「ならいいが···しかし、篠原さんが報告に来るのは珍しいな。」

「あ、そうでした。ついでに頼みたい事が···。希望生徒には、授業とは別に護身術教えてるって聞いて、私もお願いしたくて。」


そう言うと、烏間先生はさらに驚いた顔をした。
先生達にも私のレッテルは、相変わらずという事か。


「も、もしかして駄目でしたか?」

「いや、参加は構わないが···無理はしてないか?」

「え···?」


てっきり珍しい、意外だ、などの言葉が出ると思っていた。
しかし予想とは反した言葉に、思わず間抜けな声が出てしまった。


「最近、訓練や暗殺に力を入れているようだが···無理にスキルを上げる必要は無い。」

「いえ、そんな···」

「さっきも言ったが、君達を危険に曝すワケにはいかない。無茶をするなんてもっての外だ。」


さて、烏間先生の言う事はもっともだ。
しかし、自分自身の限界も力量も、自分が一番知っている。
無理はしてません、私ははまだまだやれます、なんて言えば聞こえはいいだろうし、一般的にはそう答えるのが模範だろう。
しかし私は、あえて模範的な回答はせず、思ったままを言うことにした。


「烏間先生、よく思い出してみてくださいよ···今まで私がどれだけサボってきたことかを。」

「多少不真面目さが見えてたが、自覚はしてたのか。」

「自分の遅れも自覚しています。だからそれを埋めるために、少しくらい無理してやんないとなんですよ。」

「···分かった。くれぐれも自己管理は怠らないように。」

「烏間先生そういうところ、大好きですよ。」


私が茶化すようにそう言うと、からかうな、と一言返された。
たしかにからかって言ったけれど、烏間先生が好きなのは本心だ。
もちろん恋愛感情ではなく、尊敬の意味で。

私達を暗殺者として育てると共に、人としても成長させてくれている。
そんな真っ直ぐなところに、私たち生徒は惹かれている。
こんな先生に恵まれたクラスは、きっと他にないだろう。





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