中編

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あの事件は私に大きな影響を与えた。

その事件自体に私は全く関与をしていない。
けれど後日にその話を聞き、衝撃を隠せなかった。
実際表面、顔に出してはいなかっただろうが、ただ表情に出さなかっただけであって、私の中では複雑に入り込み混ざり、目眩を覚えるほどだった。





「何と言いますか···知らないところで壮絶な事があったようで···。」

「そんな大げさなことじゃないよー!ちょっと怪しい感じだったけど、クルークっていつもあんな感じだしなぁ。」

「アミさん、それはちょいと失礼な気がしますよ。気持ちは分かるけど。」

「あ、後ね、クルークからこれもらったんだ!」

「それは太陽のしおり···てことは、ホントに封印を解いたんだ。」


放課後楽しくお喋りをしている、と言えばそう見えるだろうし、現にそうなのだろう。
会話の内容といえば、さっき衝撃を受けたというあの事件。

クルークがいつからか、ずっと持っているあの本、プリサイス博物館内の図書室に置かれていた1つの『封印のきろく』の封を解き、体を乗っ取られた。
そしてそれを再び鎮めたという一連騒ぎ。
数日前からクルークの様子も多少おかしかったが、これで納得ができる。
アミティが封印を解くためのアイテムの一つ、太陽のしおりを見せてくるし、話は紛れもなく本当だろう。

封印のきろくは以前、私も読んだことがある。
確かに興味深い内容であり、あの本に魔物が封印されているのは本当だと分かっていた。
けれど私はその封印を解こうとは思えなかった。
封印を解いてどうなるかも分からないし、何があっても抑えられる自信があるがどうかと聞かれると不安が募る。


「結局、何だったのかな?あれってクルークじゃないって事なんだよね?」

「うーん···まぁそう言う事になるかな。クルークであることに間違いはないけど。」


とは言っても、魂レベルで完全な別人。
それを説明したところで混乱するだろうし、アミティが深く関わる必要はない。

気になるところはいくつもあるが、追求してもアミティは不思議がるだろうし、場合によっては心配するかもしれない。
なるべくそれは避けたいし、封印が解けたという事実が知れただけげも十分だ。
後は自分で自ら調べるのが良いだろう、そう思って机の横に置いておいた教科書や本などの入ったカバンを肩にかけ、椅子から立ち上がる。


「そろそろ帰ろっか。暗くなるし、宿題もあるし。」

「そうだったー!あたし今日は多く出されてたんだー···。」

「ははっ、そういえばシグもそうだったよね。」

「サユー!お願い、教えて!!」

「まずは自分で頑張りましょう。分からないところは明日教えてあげるか。」

「うぅー···。」


今日の授業中、アミティとシグは居眠りをしてしまい、見事アコール先生からクレ・ランスを受け、さらには宿題が1.5倍に。
1.5倍というのは多少優しさもあるな、とも思った。
先に帰ったシグは宿題を消費したのだろうかと考えたが、まぁきっと虫を捕まえに行ってるだろうし、まだやっていないな、と容易に想像ができた。
明日の朝はホームルーム前に二人の宿題の手伝いをすることになるかな、と想像すると思わず頬が綻んだ。

アミティと一緒に帰ってる途中で広場でアルルに会ったり、街のお店の前を通りおしゃれコウベさんと話したり(正確には強制ファッションチェック及び指導)、そんな日常的な普通の出来事も起きた。


そう、この日常を守るためにも、いろいろ調べなければならない。

たとえそれが私のエゴだとしても。





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