中編

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知らない道を、3人の後ろ姿を頼りに歩く。
ここにいても、何があるわけでもないし、迷惑をかけてしまうだけだ。
ここはとにかく、一旦別行動に移り私なりに調べていくのがいいかもしれない。
道に迷うのは目に見えているが、それを怖がっていたら何もできない。
自分の中で解決したところで、話を持ち掛けようとした。


「ということだけど、サユはそれでもいい?」

「え?ごめん、聞いてなかった···。」

「だから、私の家で下宿生活。」


こっちは私とは、全く正反対のことを考えていたようだ。
いくらなんでも、急すぎる話ではないだろうか。


「多分大丈夫じゃないかな。私の部屋でよければ、いくらでも貸すよ。」

「僕は同じ商店街だから、何があればいつでも駆けつけるよ。」

「私も協力できることがあれば、できる限りのことをしよう。」

「い、いいの?でも、迷惑じゃ···」

「とんでもない!向こうではサユにお世話になりましたから。」


思わず泣きそうになったが、なんとか堪える。
それこそ迷惑になりかねないと思った。
ずっととはいかないが、今はこの好意をありがたく受け取っておこう。


「それじゃあ早速、我が実家へ!」

「りんごちゃん、落ち着いて歩かないと転ぶよ。」

「うむ、三人とも、気を付けて帰るように。」

「はーい。」


どうやらりすくまさんは商店街の方ではなく、1人違う方に住んでいるらしい。
どんな家か、とても気になるが触れないでおこう。









「親御さん、いい人だね···。」

「困っている人を助けるのは、当然だよ。」

「だからって、見ず知らずの人を泊めるとは。」

「そこは、ほら、私の友人だしね。」


りんごの家に行けば、青果店でお客さんの相手をしていた親御さんに会った。
軽く挨拶をし、店先でりんごが大まかな説明をすると二つの返事で許可してくれた。
かわりに後で店の手伝いをしてくれと言われた。
泊めてもらう側として断れないが、家事ならともかく店番の自信は全くない。


「店に損害だしたら、責任取れないじゃん!」

「サユは私の家で何をする気?!」

「だいたい、素性も分からないのに数日間泊めてくれる親も、それはそれでどうなの。」

「旅は道連れ世は情け、ですよ。いざというときは皆で口裏を合わせれば、どうとでもなりますから。」

「りんごって結構たくましいよね。」


有難いけど心配になる家だ。
あの心優しい親御さんを騙すのは気が引けるが、この世界の常識では、正直に話すのは向いてないと言われたら仕方ない。


「この世界には、プリンプみたいに魔法がないから、異世界とか信じる人はあんまりいないんだよ。」

「そうみたいだね···。街の人達をみても、魔力はぜんぜん感じれなかったし。」

「ぷよを消す力を持っているのも私達だけだし、ここでは魔法は使わずに普通の人間を装った方がいいよ。」


さらりというけど、魔法のある世界で生きてきた私にはちょっと難しい。
つまりは魔法を使わなければいいだけだ。
多分何とかなるだろう。


「せっかくだから、この街で楽しんでいってよ。明日、商店街周辺を案内するよ。」

「そうだね、これはこれで楽しもう···!」


あまり心配ばかりしてても進まない。
状況、この世界を楽しみつつ、色々調べていればそのうち戻る方法が見つかるがしれない。
見つかって欲しい、という方が正直だ。
現実逃避気味ではあるが、気持ちを切り替えていくしかない。

異世界に興味がまったくない、というわけでもない。
どうせならいろいろ知っていきたいが、深く関わるのも良くないだろう。
プリンプにいた頃より自由はないが、三人がいるからきっと大丈夫だ。
そう思いつつ、本日は安藤家にお世話になった。





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