中編

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「あれ、二人とも、いらっしゃい。」

「ここがまぐろくんの家が経営している魚屋さんだよ。」

「こんにちはー、昨日振りー。」


りんごと一緒に商店街の中を回っている。
知らない土地のお店を見て回るのは、なかなか面白い。
お金はないので買い物はできないが、思い出として心に残すという方で。
りんごの家のお店から数軒離れたところには魚屋があり、店の手伝いをしていたまぐろと遭遇した。


「ところでりんごちゃん。良い鰈を仕入れたんだけど、今日の夕食にどうだい?」

「確かにこれは新鮮な鰈だ···後でお母さんに言っておくよ。」

「それじゃあ、残しておくね。」

「ちなみにうちには、鮮度の良い梨があるんだけどなぁ。」

「後で寄らせてもらおうかな。」

「二人とも商売上手だ···。」


自然な流れで商売している二人に置いていかれたので、三者目線で傍観する。
昔から手伝いをしているのだろう、とても手馴れている。
幼馴染みに互いに売りつけるところも、また慣れた風だ。


「それで、二人は手掛かり探しでもしてるの?」

「言っちゃえば、観光かな。」

「なるほど。何もしないで帰るのも、つまんないもんね。」


納得するところなのか。
まぁ私がそっちの立場なら、納得して案内をするだろう。
私も好奇心旺盛な性格だと自負しているし、ここで動かなければ私ではないと思うくらいだ。
しかし一人で動けないのは情けない。
絶対に迷子になるから。


「そうだ。まぐろくんも一緒に案内してあげようよ。」

「僕もかい?···ちょっと待っててね。」


そう言って店の奥に姿を消した。
多分店番を抜けることを話しているのだろう。
そういえばまぐろは、家の手伝いをしている途中だった。
気にせずに誘うところが、さすがりんご。
自分の家が店を営業をしているなら、手伝いをしている時に誘うのは、遠慮するものではないだろうかとは思ったが言わない。


「弟が店番変わってくれるみたいだから、僕も一緒に行かせてもらうよ。」

「てか、弟いたんだ。」

「店番を任せるのはちょっと不安だけど、大丈夫だと思うしね。」


店の奥から、エプロンを外しなが出てきた。
話を聞く限り、弟さんは心優しすぎるらしい。
機会があれば、ぜひ一度会ってみたいものだ。
その弟はまぐろに似ているか、を聞いてみたら黙秘された。
どういうことだ。


「それは後にして、観光の続きをしようよ。」

「解せない。」

「とりあえず、商店街をこのまま真っ直ぐ行って抜けましょうか。」


観光といっても、この辺は名所があるわけではないとりんごが言うが、そこはこの際何でも構わない。
目的は有り余っている時間の消費と、戻るためのヒント探し。
何も見つからず徒労で終わるだのは目に見えているが、何もしないよりは良い。

商店街を抜け、駅前まで案内をしてもらい一旦休憩。
三人でベンチに腰掛け、今後について話している。


「休日ならともかく、僕たちが学校の日はどうするの?」

「うーん···昼間は実家の手伝いをしてもらって、放課後の頃に部活に遊びに来るとか?」

「待って、普通に言ってるけどいいの?」

「普通はダメかな。」

「でも生徒と扮して侵入すれば···私の制服貸すよ!」

「いやいやいや。」


それって俗に言う、不法侵入ではないか。
とんでもない事を思いつく子だ。


「でも、一人じゃつまらないし、学校にきた方が面白いよ。」

「部室なら、先生もほとんど来ないしね。」

「なにそのバレなければいい、みたいな発想。ダメ絶対。」

「じゃあ3時半に正門集合で。」

「決定?!」


ダメとか言ってたまぐろも、いつの間にか普通に侵入、もとい進入の話に乗っていた。
りんごは初めから進入させる気満々だし、止めにはいる人はいない。
そして残念ことに、反対していた私も心の隅にある、学校に行ってみたいと言う好奇心には勝てず、最終的には話に乗っていた。





(※他校にお邪魔する時は、必ず事務室等で許可を取りましょう)

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