中編

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りんごに借りた制服を着て、私は中学校の門の前にいる。

昨日の約束のとおり、日中はりんごの店の手伝いをして、その後にここに来た。
初めてのことで、少しまごついてしまったが、親御さんがフォローしてくれたおかげで、目立った失敗はなかったと思う。
時間になり、予め借りていた制服を着て学校に向かった。

正門でみんなを待っているが、放課後とあって下校する生徒がちらほら見える。
自意識過剰なだけかもしれないが、少し視線を感じる気がしてならない。
誰でもいいから早く来て欲しい。


「サユちゃん、お待たせー。」

「まぐろ!救世主!」

「何があったのかい?」

「何もなかった!ところで、他二人は?」

「先に部室に行って、実験を始めるってさ。」


何の実験をしているんだろう。
たしか物理部だときいたが、その実験となると何となく難しそうなイメージがある。


「基本、何でも部だからね。そう難しく考えなくて良いよ。」

「ふーん···でも、ちょっと面白そう。」

「変わってるけどね。」

「お前が言うな。」


まぐろに連れられ、校内に入る。
ここに来たとき一度入ったが、あの時は慌ただしかったし、よく覚えていない。
知らない学校というのは新鮮だ。

校内にも部活に向かう人や、室内部活をする人がいる。
誰かとすれ違う度に、少しドキドキする。


「堂々としてないと、返って不自然だよ?」

「そう言われても···もし、バレたらどうするの?」

「転校生で下見に来た、で。」

「何その出任せは。」

「まぁ何があったとしても、ここでは僕達がサユちゃんを助けるから、どんどん頼ってね。」


純情にもドキッとしてしまったが、吊り橋効果と思っておく。
まぐろは口先が上手いようだ。
覚えておかないと、いつか騙されそうな気がする。
もともと変わっているとは思っていたが、それだけじゃないようだ。
頼りになるが、ちょっとだけ気に迷いが生まれるのは仕方ない。


「部室はここだっけ···?」

「そうそう。二人とも、サユちゃん連れてきましたー。」

「あー!まぐろくん、そこ危ない!!」

「え?おおう···!」

「うわっ!まぐろ大丈夫?!なんでぷよが···?」


扉をあけた瞬間、りんごの声と共に飛んできたぷよ。
しかもそれはまぐろの顔面に、見事にクリーンヒット。
おじゃまぷよが降ってくる時もそうだが、柔らかいくせに重量はそれなりにあるので、結構痛いはず。
今回は普通のサイズだったからいいものの、でかぷよだったらもっと痛かっただろうな。
まぁ微塵も良くないが。


「ごめんごめんー。ぷよの消える原理と、どうやって生み出されるかを調べる実験してたら、いつの間にか先輩とぷよ勝負になってて···。」

「相殺の際、弾かれたぷよがそちらに飛んでいってしまったのだよ。怪我はないかい?」

「僕は大丈夫です。サユちゃんは?」

「う、うん。当たってもないし、なんともないよ。」


部室に入ってもいないので、その光景を見ただけで少しもかすりもしなかった。
私よりも、まぐろは顔面に思いっきり当たっていたが、本当に大丈夫なのだろうか。

あと実験の内容も、それはどうなんだ。
今まで当たり前だったか考えたこともないが、なぜ消えるかと問われると答えられない。


「分かるといいね、ぷよについて···。」

「そのために!ぷよの観察をしたいのでぷよ勝負を!」

「部活は?!!」

「ぷよ勝負かな。」





(※他校にお邪魔する時は、必ず事務室等で許可を取りましょう)

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