中編

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「失礼しまー···あれ?りすくまさんだけですか?」

「2人は少し遅れてくると言っていたよ。その辺りに腰を掛けて、待つと良い。」

「あ、はい。お邪魔します。」


部室までの道のりはすぐに覚えられたので、今日は一人でここまでやってきた。
心細さと罪悪感は相変らず否めないが、これはもう慣れるしかない。
出来れば慣れたくないけど。

来てみたはいいものの、2人は何か用でもあったのか不在で、部室にはりすくまさんのみ。
少し離れたところで、不思議な色をした薬品を使って実験をしている。


「ところで、りすくまさんは何をしているんですか?」

「一実験でもしようと思ってね。失敗すると危険だから、少し離れておきなさい。」

「何でそんな実験を学校でやるんですか。」

「無知から得る知···そのためにも、実験が必要というワケだ。」


らしいことを言ってるけど、何の答えも出ていない。
バーナーを使ってフラスコの中にある薬品を加熱している。
そして他の薬品と混ぜたり、何かを検出させたりなど。
つまり私には、さっぱり理解ができないわけだ。
大人しく離れて眺めようと思い背を向けた瞬間、後ろから爆発音が聞こえた。


「り、りすくまさん!何があったんですか?!」

「失敬。ちょっと失敗してしまったらしい···。いつもの事だから、気にしなくて結構。」

「いやいや···。ひとまず、片付けましょうか···。」


爆発と共に散った実験薬とビーカーの破片は、片付けておかないと危ない。
とりあえず、手で拾える大きさのガラス片を拾い集める。
その際、少し怖いので実験薬には極力触れないようにした。
後は新聞紙やほうき、ちりとり等で片付ければ終了。


「手間をかけさせてしまったね。助かったよ。」

「いえ、このくらいしかお役に立てませんし···。」

「とんでもない。サユくんには向こうの世界でも、こちらの世界でも助けられている。むしろ、感謝しきれないくらいだ。」

「え、あ、えっと···あ、ありがとうございます···。」


りすくまさんが言うと、何だか貫禄もあって少し照れてしまう。
上手く表情が作れなくて、思わず背を向ける。
きっと今の私は不審な動きしかしてないだろうが、こればかりは仕方ない。


「すみません、遅くなりましたー···て、あれ?何かあったんですか?」

「な、何でもない!何もなかった!!」

「のわりには、すごく焦っているような···。」


あっているけど、できれば聞かないで欲しい。
このタイミングで来てほしくはなかったが、これ以上二人でいるのも耐えられなかったので、良いのか悪いのかはどうとも言えない。
りすくまさんは悪い人ではないと思っているが、何だか近寄り難くて苦手だった。
けど今回のことで、また別の理由で苦手になりそうだ。





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