中編
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今日は学校が休みなので、りんごと部屋で大人しく話しをする。
こっちに来て1週間経った。
私が元に戻れる気配は、まったくと言っていい程感じれない。
一体どうすればいいのだろうか。
ここでの生活が嫌というわけじゃないが、やっぱり戻りたいとは思う。
「前みたいに、理由がはっきりと分かればいいのになぁ。」
「それって、アミティ達がこっちに来た時のこと?」
「と言っても、あれは全部エコロがやったことだけど···。」
「呼んだ?」
「「エコロだー!!」」
突然現れたエコロに、りんごと一緒に大声で叫んでしまった。
きっと外まで聞こえたと思う。
親御さんや、周りの人に怪しまれなかっただろうか。
そんなことより、何故ここにエコロが居るのだろう。
「りんごちゃんを見に来たら、たまたま名前を呼ばれたから何かなーって。」
「偶然とは恐ろしい···。」
「それにしても、何でサユちゃんがここに居るの?たしか、プリンプってところに住んでたよね?」
「それが、私達にも分からないんだー。」
エコロがまじまじとこっちを見て、考えている様子だ。
もしかして、エコロには何かわかるのだろうか。
「原因は分からないけど、僕なら元の世界に返してあげられる、かも···?」
「ほ、本当に?!それでサユは帰れるの?!」
「責任は取れないけどねー。」
「何それ、怖い!!」
以前、エコロと初めて会った時に、時空を越えることができると言っていた。
時空の旅人だから、出来て当然だろうが、まさか私もそれで戻るとか言い出すんじゃないだろうか。
「サユちゃん、大正解ー!今回は皆の力も借りれないし、空間の歪み的なものもないから、どうなるか分からないんだけどね。」
「確かに、別の空間に連れていかれたことならあるけど···条件も違うし、ちゃんと成功するの?」
「うーん···。でもサユちゃんは僕の事を覚えているし、きっと大丈夫だよ。」
「それってどういう···」
「それじゃ、早速いくよー!」
「ストーップ!!」
私がエコロのことを覚えているのに、何の意味があるのか問おうと思ったら、もう準備をしている。
突然戻されても困るので、私は必死に止めさせてもらう。
帰りたかったけど、改めてこうなると少し淋しい。
けど帰らないワケにはいかない。
「30分だけ待ってくれない?あとりんご、貸して欲しいモノがあるんだけど···。」
「あ、うん。ちょっと待ってー。」
「じゃあ待ってる間、りんごちゃんはボクとぷよ勝負ー!」
「だど思った!···て、私の部屋で?!」
横で二人がぷよ勝負をしている中では、ちょっと集中しにくかったけどやりたいことは終えた。
勝負も一段落ついたみたいだ。
「あれ、サユちゃん。もう終わったの?」
「うん。ごめんね、待たせて。りんごに最後、お願いがあるんだ。」
「何ですか?」
「もし私が無事に戻れたら、これをみんなで見てよ。」
そういって、さっき急遽用意したものをりんごに渡す。
時間が無くて直接渡せないから、まぐろとりすくまさんの分もりんごに渡した。
元の世界に戻れる前提で用意したので、戻れなかったらもちろんそれは返してもらって処分する予定。
何しろ恥ずかしいから。
「分かった、預かります。···これでお別れだね。」
「きっとまた会えるよ。そんな気がする。」
「···そうだよね。その日を楽しみにしてるよ!」
「じゃあサユちゃん、そろそろ行こっか。りんごちゃん、またね。」
エコロが手を振った瞬間、光に包まれ私は意識が遠のいてしまった。
途切れる直前、りんごが私とエコロに笑顔で見送っているのが見えた。
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