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□大きな決断
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――チュンチュンチュンッ…
……結局答えを出せなかった…;;
『……あーもうっ!とりあえず顔でも洗って目ぇ覚まそっ!』
勢いよくふすまを開け、洗面所へと向かう。早朝に目覚めてしまったのか、まだ空の上が暗く見える。
――バシャバシャッ……
『……―ふぅ…』
……――そういえば、部活をしてた時も早起きして練習してたっけ。
『……稽古場、開いてるかな?』
――ギギィ……
稽古場の入口を押してみると、ゆっくりながらも人の気配を感じない真っ暗な中が姿を現した。
『ほんとに立派な稽古場……』
綺麗に行き届いた掃除、歴史のありそうな兜、真選組に似合ったこの緊張感に私は吸い込まれるように足を進めた。
『……―武道場を思い出すなぁ』
学校にあった武道場。
私は柔道部も剣道部も入っていたから出入りするのは多かった。
その雰囲気、緊張感はこの稽古場と瓜二つだろう。
『…―あ、竹刀が置いてある…。誰かの忘れ物かな?』
見渡していると、ふと転がった一本の竹刀を見つけた。ゆっくりとそれを手に取る。
『…借りてもいいかな、その竹刀。
……誰かさんお借りします』
この木の感じ。
昨日は急に勝負ってなったから分かんなかったけど、とても使い古びた竹刀だ。ずっと大切にしてきたんだろう。
『――……お願いします』
私は部屋の奥にある兜に一礼し、ゆっくりと竹刀をあげた。
『…――やぁあっ!!』
――ダンッダンッ!!
ただ響く私の足音。
なんとも心地いい音だ。
『…はっ、…たぁあ!!』
去年の感覚を思い出す。
『………――やぁああ!!』
――ダンッ!!!
『……はっ…はぁっ…』
―……やっぱり最近練習してないから腕が鈍ったなぁ……。
でも、汗かくのって気持ちいい!
『……ありがとうございました!』
私は再び兜に一礼し、竹刀をあった場所に戻そうとした時だった。
『………――ぇ』
入口に人の影が見える。
……え、何何;;;
まだこの時間帯誰も起きてないと思うけど……まさか泥棒!?;;;
置いた竹刀をもう一度手に取り、ゆっくり音を立てないように近づく。
――バッ!!
『――……』
「…――何してんだ、名字」
『……――ぇ、と…;;;;』
「人の竹刀勝手に使うのはどうかと思いますぜィ?」
『…―――い、いつからここに;;;』
その影の正体は……鬼と悪魔だった。
「気にしねェでくだせェ、"ほんとに立派な稽古場…"のとこぐらいからしか見てやせ『ほぼ全部見てんじゃねぇかァアアアア!!!//;;;』」
「…たく、朝はぇーのに稽古場から物音が聞こえると思ってきてみりゃぁ…」
『ご、ごめんなさいィィっ!!;;;
そのっ、竹刀があったのでついつい……っ;;;;』
土方さんは「ハァー…」とため息をついて私を見た。
「そんなに好きか、剣道は」
『……え』
「ついつい手に取ってしまうぐらいだ。相当好きなんだろう?」
『…―はい、好きです。剣道は特に……心が洗われるような感じがするから…』
「なかなかのロマンチストなんですねィ、名前」
『い、いいじゃないですか!
私だってそれくらい考えます!//;;;』
ニヤニヤと沖田さんに笑われると、かぁっと熱くなるのを感じた。
「まぁ、今回は多めに見てやる。
次は俺に交渉してからやれ」
『え、またしていいんですか!?』
「練習する事は悪いことじゃねぇ。
やりたきゃやればいい」
『よっしゃあぁっ!!
ありがとうございますー!』
「物好きだねィ、コイツァ」
『物好きで結構ですぅ〜w』
「うわ、何かうぜぇ」
「名字、総悟。
そろそろ朝飯の時間だ、行くぞ」
そう言うと沖田さんと一緒に食堂へと歩いていった。
『―……ありがとうございました』
私は稽古場の入口に一礼したあと、急いで土方さん達のあとを追った。