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□さぁ、戦いましょう
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「…――今追いかけてる車の運転手、おそらく薬(やく)を使ってまさァ」
『え……それってもしかして……』
私の代わりに運転してくれている沖田隊長が淡々と話し始めた。
「ぶつかりそうになった時、運転手の顔がチラッと見たが、視点が定まってねぇ。むしろ蛇高運転みてぇな危ねェ運転してるにしちゃぁ、妙な顔つきをしてたんでねェ」
……――あんな一瞬、しかも想定外で起こった事なのにそんな所まで見てたなんて………。
「俺の予想が正しければ、アイツは倉庫に向かう」
『倉庫って、朝近藤さんが言ってたターミナル付近の?』
「おそらくそこでィ。だが、決定的な確信が無いことには隊を動かすのは難しい。まずは俺達だけで探りを入れてみる」
『…――なるほど…。でも、取引が行われるのは午前1時頃の筈じゃ…?』
「確かにザキの調べの結果から考えての時間だから大きく外れてるっていうことは有り得ねェと思う。
だが、それはあくまでも大きな取引が関わってる時の事でィ。
もし今行って取引が行われていたとしても、それは多分個人的な取引でサァ。」
『―…確かに、個人的なものならまだしも大きい取引なら人気の無くなる真夜中にしますよね。
―…もし春雨がそれに関わってるとしたら尚更……』
――キキィイッ
「――…まぁ、とりあえずはあの運転手を現行犯逮捕出来りゃぁ今のとこは上出来だろうよ」
――バタン、バタンッ
車を追いかけて着いたのは、沖田隊長の予想通りターミナル付近の倉庫。
幸い相手には気づかれてないみたいだ。
パトカーが見つからないように、少し離れた所に停め後を追った。
「…――お、いたぜィ。…誰かを待ってるみたいだな」
―…コツコツコツ……
『…あ、来ましたよ!』
倉庫の裏口付近に隠れ、様子を伺う。歩いてきたのはスーツ姿の男。
「…―待たせたねぇ、樋口クン」
「気にするな、俺も今来た所だ。
それより早くくれよ!もう持ってるやつぁほとんど無くなっちまってんだ」
「まぁそう焦るなよ。お目当てのもんはちゃーんとここにあるからさ」
そう言って男が持っていた鞄から取り出したのは、小さな袋に入った白い粉らしきもの。
「―……間違いねぇ、ありゃぁ麻薬以外何物でもねェや。
…にしても…―あの男、どっかで見たような顔でェ」
『……―あ、沖田隊長!もうすぐ取引が行われるみたいです!』
スーツ姿の男はあの運転手の男に近づき袋を手渡す…………
――………はずだった。
「…――しかし困りましたねぇ。ネズミに見られてちゃぁ、渡せませんわぁ。
……しかも、一匹ではなくもう一匹」
「『…!!!』」
…―――気づかれた。
「…チッ、仕方ねェ…。
(ザッ!……―よく気づきやしたねェ、陰険メガネ。そこにいるアホと一緒にしょっぴいてやるから大人しくしやがれ」
「しっ、真選組!!?;;
いつの間に居たんだ、お前ら!!」
『貴方が此処に来るまで追跡させてもらいました。言い逃れは出来ませんよ!』
「…――クククっ…あははははっ」
「…――何が可笑しいんですかィ」
「…ククッ…―失礼、貴方方は何か勘違いしていますね」
『…――勘違い?』
「……確かに、私は貴方方が考えているであろう麻薬取引を行っています。この人に売っていたのもまた事実。
ですが、今回ばかりは違うんですよぉ」
「どういう意味でェ、陰険メガネ」
「――…まだお分かりにならないですか……。でしたら…―――(パチンッ」
――ガシャンガシャンガシャンッッツ!!!
不敵な笑みを浮かべたのもつかの間。スーツの男が指を鳴らした瞬間開いていた出入り口や窓など、外に繋がる全ての所にシャッターが降りた。
―――ザワザワザワ……
「…――やられた、こいつぁ罠だったのかよっ…」
『う、嘘でしょ…――』
目の前に現れたのは、何十人と並ぶ男達。その手には銃や刀などの武器を所持している。
「な、なんだよこれ!?;;;
お、おい、兄ちゃん!!俺だけは逃がしてくれ!おらぁ、そいつ貰いに来ただけなんだよ!」
「あぁ、確かに貴方はもう用済みです。…――だから」
――…ドンッッッ!
「…――さっさと死ね」
「ぐ、ぁ、あ”……っ…!」
――……ドサッ
捕まえるはずだった運転手。
しかし、目の前で遺体と化した。
この男の手で。
「さぁーて、お待たせしましたー。わざわざ真選組の方々がお見えになった訳ですし………――、
派手にやっちまえェエエエ!!!」
「「ぅおおおおおおっっ!!」」
一斉に男たちが走り出した。
こっちはたった二人、まだ隊の人には伝えてない。
――キンキンキンッッッ!!
「ぐっ……!!……ぉらアアア”ア”!!!」
――ザシュッザシュッ!!
沖田隊長は驚く程のスピードで男たちを斬っていく。
私もそうしたいのは山々なのだが……
『ぅわぁっ!?…っと、あぶねっ!!;;;ちょ、待っ…たぁああっ!!!;;;;』
かろうじて避ける事だけは出来た。
が、反撃ができない。これじゃあ隊長の負担も大きいし敵もいつまで経っても減らない。
だけど、人を斬るなんて私には到底無理な話だった。
「この女っ、ちょこまかと動きやがってぇえ……。いい加減にくたばれぇええっ!!」
『誰がくたばるかっ!このアホヅラァアアアア!!』
――シュッシュッ、ガタッガシャァアンッッ!!
「…――おい名前!!お前逃げてばっかでどうすんでィ!…――うらぁあ!(ザシュッ!…――さっさと刀抜きやがれっ!!」
『そんなの無理に、ぅおっと!!;;;決まってんじゃないですかぁあ!!;;』
「んな甘っちょろい事言ってねェで、早くこいつら斬りやがれっ!!」
…――そんなこと言ったって、無理なもんは無理なのにぃいい!!;;;;
しかし、ずっと刀を持たないっていうのもあれだから、とりあえず持つだけ持とうと引き抜いた。
――シュッ!
『…う、わぁ…これが本物の刀かよ………;;;こっわ!;;;;』
「んな感想要らねェから、さっさと殺りやがれっ!!」
『えええぇっ……!?;;;;無理って言ってるのにっ…―って危なっ!?;;』
――キィンッッ!…ギギギッ…!
「おいおい姉ちゃん、悪あがきはしない方がいいぜえー?さっさと死んで楽になっちましなよー」
『だっ、誰がっ…!テメェが死ねっ…!!』
「チッ…可愛げのねぇガキだ、な”っ!!!(ドゴッ!」
『ぐっ!!?』
――ズサァアアッッ!!
つい刀の押し合いに気を取られ、相手から蹴りを食らってしまった。
『…っごふっ…!ぐっ…!…はぁっ、はぁっ……!』
―…くっそイテェっ…あいつわざと溝うち狙っただろ…っ!
息が、しにくい…っ…!
「…おいおいw
刀や銃だけが武器じゃないんだぜぇ?wwよく覚えときなぁ!」
『…ぐっ…!くっそ…!!』
「―……ん?よく見りゃ、姉ちゃん可愛い顔してんじゃねぇか。こりゃなかなかの上玉だ。
アニキ、この餓鬼見て下せぇ!」
ジロジロと私の方を見たあと、部下の奴がスーツ野郎を呼びつけた。
「…――なんだ、一体」
「見て下せぇ、なかなかの上玉だと思いやせんか!?」
「なに?―――……ほぉ、なるほど」
そう呟き、私の頬や髪などあらゆるとこを触ってくる。正直鳥肌が止まらない。
―……気持ち悪いっ!!
『……っ…触んじゃねぇえ(ガンッ!!…―ぅあ”っ!…――っ――』
「名前っっ!!…テメェ等そいつに何しやがんだぁ”あ”あ”!!!!」
――ダダダダッッッ!
「……―おい、この餓鬼連れていけ。「へい」…――さて兄ちゃん、今日の所はコイツで勘弁してやるよ!」
…――や、ばい……連れてかれる……。早く逃げ、ないと……―。
『…――隊、ちょぅ……――』
「待てやテメェ等ァアアアア!!!」
―――ザシュッザシュッザシュッザシュッ!!
「…――さすが真選組一番隊隊長、沖田総悟だ。思ったよりも手強い…。
だが、この人数……1人で勝てる訳がないだろう?」
―ザッザッザッ!!
「…――まだ出てくんのかよ…っ!ゴキブリですかィ、テメェ等」
「ははは……そんな口を叩けるのも今の内…―(ドゴォォオオンッッ!!―…な、何事だ!?」
「御用改めである!!大人しくしやがれ野郎どもぉお!!」
――ウワァアアア!!
「チッ!くそぉお!!」
微かな意識の中で捉えたのは、シャッターに空けられた大きな穴と副長を筆頭にした真選組の姿だった。