short

□orange enemy
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――――・・・これは、鉄の、血の臭い。何度も怪我を治療してきたから分かる。

でも、どうして・・・






不快な、いつまで経っても慣れない匂いに目を覚ました。





「…う、…」



グラグラしていた頭だが、周りを見た瞬間覚めた。






どうして皆が…死んでるの





隊長も、足を怪我した人も、他の人達も、皆静かに転がっていた。




「起きたんすね。思ったより早い目覚めで僕ビックリ〜!」





巫山戯た口調で言った敵の仮面には血が付着していた。仮面だけでなく、黒くてわかりにくいが暁メンバーの証である装束にも着いていた。




手袋からは血がポタポタと垂れている







「な、んで・・・何で、私たちを、狙うの・・・」





怒りも悲しみも、救えなかった悔しさも、全てこの男に対する恐怖に押しつぶされた

絞り出した声はとてもか細く、震えてしまった。






「あらー、怯えちゃって可愛いなぁ。正確には君らを狙ってたんじゃなくて君だけを狙ったんだけどね〜」




、私・・・を?…犯罪者、しかもその中でも恐れられているS級犯罪者、暁の人に狙われるような事をした覚えは特にないはず



「…ど、して、私を…?それに、私だけを狙っていたなら、、彼らは何の関係もなかったでしょう・・・!?」




「それが関係あったんスよ〜!隊長さん?以外は君の医療忍術を恐れて暗殺しようと企んでた奴らで!隊長さんには近くにいたから殺しちゃたんスけどね。というか、むしろ僕君を助けたんだけどなぁ」




私を狙う理由は答えずに、彼らを殺した理由を聞くと、とても信じられないことを言い出した。



「そ、んなこと、あるわけ…」

「まぁそれはどーでもイイんスよ!隊長さん含む全員が死んじゃったんだし!」



私の言葉を遮って言った


この仮面の男の言ったことに再び怒りが湧いてきて怒鳴ってしまった




「どうでもいい…?人の、一つしかない命をそんなに軽く見ないで!!」




怒鳴ってしまったことに後悔はしない。命をこんな風に見ている人が大嫌い。


怒りで興奮したからか、仮面の男の纏う雰囲気が少し冷たくなったのに気付かずに、そう思っていた。





「…君もあの男と同じようなこと言うんすね〜。何だか妬んじゃいます。」



言って、私へと一歩一歩近付いてくる。


また、恐怖が蘇る




立って、立って逃げなきゃ…!

でも体はいうことを聞かず、私はどんどん近付いてくる男の、血溜まりを踏んで来る足を見ながら情けなくも震えていた





遂に目の前に来てしまった。

私は怖くて顔を上げることができない。このまま、彼らのように殺されてしまうのだろうか…。





「何でユキちゃんの命を狙ってたやつには励ましの言葉や笑顔を向けるのに、助けた僕にはそうしてくれないんスか?」





私の名前を呼んだことに驚いて顔を上げると、目の前にまた、仮面があってビックリした


男は私の目線に合わせて続けた




「ねぇ、ユキちゃん?君をこのまま誰の目も届かない所に連れ去ったら、元の居場所を失くしたら、僕を見てくれますか?」




目の前の男の言った意味が、よく理解できない



何故私の名前を知っているのか、男は何を私に伝えたいのか、情報処理が追い付かずに混乱して黙っていたら、私の言いたいことが分かったのか、話し出した




「ユキちゃんの事なら何でも知ってるよ。名前はもちろん、家だって、最近木ノ葉隠れに引っ越してきたことだってね。」



「ど、して…そこ、まで…!」


この男は、危険だ。逃げなきゃ、逃げなきゃ本当に、もう家へは、里へは帰れないかもしれない。

逃げて伝えないと、暁が出たと、何人も殺されたと。




「どうして??フフっ、そんなの…」




今だ!!



男が少し気を緩ませたスキを狙ってクナイを振った


避けるために後ろへ下がったのを見て走った




とにかく、遠くへ…!どの里でもいい…!!とりあえず人のいるところへ逃げないと!





随分走り回って、先に里の門が見えてきた。



「ハッ…ハァ…!あと、少し…!」










だが現実は、目の前に現れた男は甘くなかった。




「!?どこから…!」




突然出てきた男に驚いて、油断をしてしまった。


瞬きをする間もなく腕を掴まれて視界が歪んだ。








パッと景色が広がり慌てて着地をした



「ハァ…ハァ…こ、こは?」



ぐるりと周りを見ると長方形の柱がいくつもあって、奥の方は見えないほど広かった




「話してる途中に逃げちゃうなんて、傷つきますよぉ〜」



いきなり耳元で言われて反射的にクナイを向けようとしたが腕を抑えられてしまった




「せっかく優しくしようと思ったのに逃げちゃうから、犯罪者っぽく強引にいこうかなー」




おちゃらけた声とは裏腹にギチギチと腕を痛いほど握り締めてくる


あまりの痛さにクナイを落としてしまった



「…っ」




「あぁ、すみません痛いっすか?でも手加減はあんまりしないっスよ?やっとここまで近付けたんだし。」



「そういえば、さっきユキちゃんが逃げちゃったから言いそびれたけど、狙う理由はね。」



と、男は一息おいて言った








「ユキちゃんが好きだから。」


「…は・・・・?」




巫山戯ているのか、と言いたかった。
好き…?好きで、人を殺せるの?家が、名前が、分かるの?




「フフっ、困ってます?嬉しいなぁ」




…怖い

今まで任務の時、何度か敵と出会って少し戦うこともあったけど、ここまで怖かったのは初めてだ





「まぁ、これからはきっと慣れますから」




そう言い、男は私が落としたクナイを拾って私へと振りかざした


私は咄嗟に目をつむってしまった


「っ?」





が、何の衝撃もなく不思議に思い目を開けると、どこにも痛みはなく首を傾げた




「もう家へは帰さないんすから、その額宛てのマークも必要ないでしょ?」





言い終わると、また腕を掴んで体を乗り出し顔を覗きこんできた




「!は、離せ!」



嫌な予感しかしない・・・!









「じゃまた後で。そこはもう僕しか会えない所でしょうが。」








紅い目と絶望を誘う声を最後にまた意識は落ちていった








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