腐った寿司

□あまい、あまい
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「…はい、チェックメイト」
にやにや笑いながら、ペッテンは向かいのケレンミのキングを追い詰めた。
「これで何勝目だ、俺?」
ケレンミはつまらなそうに溜め息をつくと、淡々と言葉を吐いた。
「…26戦中23勝。」
「何、拗ねてんのかー?」
「違う」
ペッテンの言葉をつんと突き返して、ケレンミはテーブルの上のドライフルーツを摘まんだ。
甘酸っぱいラム酒の香りが口に広がる。

「…またイカサマしただろ、こんなのおかしいって」
少しだけ大人げないケレンミの言い分に、思わず頬が緩む。
──可愛いな。
これをそのまま口に出したら、きっと彼はもっと怒るんだろう。

「チェスでイカサマなんて出来ねえよ。何せお前が目の前にいるんだぜ?」
そんな事分かり切っている、という目でケレンミはペッテンをじっと見た。
不意に視線を逸らすと、また大仰に溜め息をついて、カウチに横になる。
今日の暇つぶしの餌になったトランプが、ひらりひらりと床に落ちた。

「…つまんねーの…」
腕で目元を隠し、ケレンミは尻尾まで脱力させた。
無意識に、開いたシャツの鎖骨に目が釘付けになる。
「そうか。」
そっと立ち上がると、ペッテンはケレンミの寝ているカウチに浅く腰掛けた。
「…?お前、何して……」
腕を放したタイミングで、体重を乗せるようにして口づける。
ケレンミは慌て、それで酸素を吐き出してしまったようだった。
「…ンッ、んん!!ぅ、……ッ…」
お互いの唇が離れ、その瞬間にケレンミは抵抗してみせた。
「はぁ、っ馬鹿…!お前、何して……ッ!!」
ペッテンは黙ったまま、片手でケレンミの腕をクロス状に押さえつけてしまった。

そのまま何度も、唇の端や頬に啄むようなキスを落とす。あえて先程のようなキスは避けていた。
「ぅ…ペッテン……っ」
するとケレンミも何かしら物足りない所があったようで。
「チッ、下手くそ…」
顔を動かし、自分から唇を押しつけてきた。
薄い唇を何度か自分のもので噛んで、ペッテンは暫くケレンミ越しにラム酒の香りを楽しむ。
「美味ぇ」
「この変、態……」
ペッテンは勝手にケレンミのサスペンダーの金具に手を掛ける。

「お前、まだ業務ちゅ……ッっ」
胸を手が掠めるだけで、ケレンミはヒクッと喉を鳴らした。
「…我慢効かねえのは俺だけじゃねーだろ」
ペッテンは小さく笑う。部屋のシャンデリアの光越しの彼に、その隠した瞳にまで、吸い込まれそうに魅了されて。
「こことか、さ」
…ぎゅっ。
「!!!!ひッあぁっ…!!!!」
敏感な尻尾を掴まれて、霰もない声が洩れてしまう。
「…ふ……可愛ぃ……」
「んな、や、やめろ、っ…尻尾、いやだ……!」
ケレンミは必死に抵抗するも、体格の差で簡単に追い詰められてしまった。
尻尾を相変わらず弄ばれ、挙げ句首筋に噛みつくようなキスをされる。
「んっ、ぅ、うぁ、あ、やめ……っ…」
止めろ、と何度も言うけれどそれはすぐに跳ねるような嬌声に変わってしまう。
「……大丈夫、優しくする。声出すなよ」
ペッテンはそうケレンミの耳元で囁くと、金具の外れたゆるゆるとしたシャツを捲り上げ、ケレンミの口に咥えさせた。
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